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「自由席だがサービスがいいLCC」の巻

▼撮影=03/10/09 

 航空会社のサービス低下が酷い。新聞連載を仲間と一緒にしていた時は、毎月1回、編集会議のために伊丹→東京便(帰りは、師匠と一緒に新幹線利用が常だった)をよく利用したが、朝イチの便は朝食がちゃんと出た。それはそのうち、パンを配られるだけになり、ついに飲み物だけになった。その他の区間でも、食事の時間帯には軽食が必ず出た(時刻表で確認できた)ものだが、国内線は沖縄や北海道に行く長距離便でも機内食は全廃になった。
 国際線でもLCCなら何も出ないようだ。まぁ、韓国(金輪際行きたくないが)、台湾ぐらいの距離ならば、それでも我慢できるかと思うが、5時間も6時間も乗るのに、食事も酒も出ないなんてありえないと思ってしまう。その分高くても、それが空の旅の楽しみのひとつだ。うまいかどうかは別にして。
 アメリカの航空事情も似たようなもので、私が住んでいた当時から、大手の大陸横断便でさえ機内食はもちろん出ないし、近距離便では水すら有料という鬼のような会社もある。そんな中で、LCCのはしりともいうべき「サウスウエスト航空」(漢語で表記すれば「南西航空」になる。かつて沖縄の離島を結んだJALの子会社を思い出す)は、値段も安いし、それなりのサービス(流石に機内食は出ないが)をキープしていた。今はどうなのだろう。
 サウスウエスト航空は、リーマンショックの不況下で苦しむ航空業界にあって、例外的な優良企業のひとつだった。筆者は出張で愛用していた。
 何よりも安い。これは航空運賃だけの話ではない。例えば、アメリカの国内線で荷物を預けるときに、最初の1個目から$20もチャージする守銭奴のような航空会社があるのに比して、サウスウエストは2個目まで無料なのだ。これだけでも$40違ってくる。
 サービスは悪いのか? 
 CAに中年男女が多いのは、アメリカではどこの航空会社も同じだ。ちないに私の知人の姉は60代だが、バリバリの現役スッチーだ。制服は味気ないポロシャツにスラックスだけど、機内放送でマイクを握ったCAがジョークで笑かしてくれるということも多い。
 無料のソフトドリンクも種類が豊富だし、父の日、母の日などには、無料でアルコール飲料を振舞うサービスさえある。ピーナッツ(かつてハニー・ローステッド・ピーナッツは、アメリカ国内線の定番サービスだった)も未だにくれる。
 座席のピッチがやや狭いのはどこのLCCも同じだろう。この航空会社の唯一の欠点は、座席指定なしの早い者勝ちだということだ。
 以前はカウンターでプラスチックの札を渡されたのだが、後に搭乗券を配るようになった。しかし座席指定はない。そこにはA~Cの記号と番号が印刷さているだけだ。A1~30、A31~A60、B1~30…の順に、並んで搭乗するのだ。
 写真は某地方空港で搭乗を待つサウスウエスト航空の客の列だ。早い番号を手に入れるためには、24時間前から可能なオンラインチェックインを済ませておくことだ。でないと番号が遅くなり、一緒に予約していても連れと別々の席に座る羽目に陥ることがある。その点は容赦がない。
 番号を渡すなら、座席指定にしてしまえばよさそうなものなのだが、そのようにコンピュータ・システムを変更すれば、料金に反映させざるを得ない。だからサウスウエストは、客の不便の方を選択しているのだ。
 ライバル会社は、「サウスウエストは航空会社じゃない。空のバス会社だ」と陰口を叩くが、負け犬の遠吠えにしか聞こえない。料金が安いだけじゃなくて、サービスだってサウスウエストの方がよいし、マイレージの会員制度もある。
 かくして貧乏旅行だった筆者は、サウスウエストを使い続けたのだった。

2009年07月16日11:16付拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「並ぶことの意義」に加筆修正した。

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