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「子育てが難しいアメリカ」の巻
■留守番をさせた親は逮捕
サクラメント時代、学校の近くに住んでいたのだが、平日の車の混雑が尋常ではないことがあった。もちろんそれは、子供の送り迎えの為だ。日本ではそうしなければならない事情があれば話は別だが、学校に子供を車で送迎するなどと言うと、親馬鹿の仕業にしか見えないが、こちらでは校区が広い上に、公共交通が貧弱なところが多い。小学校でも集団登校という発想もないので、スクールバスのない地区では、それは必然的だ。
カリフォルニア州では家からの距離がどんなに短くても、保護者が送迎しなければならない。登校以外にも、例えば、友人の家に遊びに行くことや留守番も含まれるのだが、12歳以下の子供だけで行動させたことが発覚した場合、親は保護者としての義務を全うしていないということで逮捕される。
共働きが多いアメリカ。しかし子供を車で送迎しないと「犯罪」になってしまう。朝は親の出勤にあわせて学校に送るものだから、6時台から子供が来ることもある。一般に学校の始業時間は7時台で、日本より1時間程度早い。朝食の給食を出す学校もある。
そのような環境であるにも関わらず、残念乍ら、子供が犯罪に巻き込まれる危険性に関しては、アメリカは日本の比ではない。確かにアメリカの人口は日本の約2倍だが、それにしても多すぎる。
2009年4月、中央カリフォルニアのトレーシーという田舎町で、トレーラーハウス(貧困家庭の象徴だ)に住む8歳の女児の遺体がスーツケースの中から発見された。このショッキングな事件は、犯人がその少女が通っていたキリスト教会の牧師の娘で、日曜学校の教師だったということ、さらには殺される前に、性的ないたずらをされていたと考えられていることなどで、さらに大きな憂鬱が社会に広がった。
こちらでは、未成年者と性行為をするだけで、成年の側は、軽く10年は刑務所に入れられる。勿論男女の区別はない。にも拘らず、性的虐待、児童ポルノなどの犯罪も後を絶たない。因みに、日本でも性犯罪に手を出す教職者の問題がメディアを賑わすことが多くなったように思うが、アメリカでも教師によるこの手の犯罪が結構目立つ。
■多すぎる「神隠し」
日本では子供がひとり行方不明になったら、全国的に大きなニュースになるだろう。しかしこの国では「神隠し」は日常茶飯事だ。チラシ、牛乳パックの広告欄、スーパーの掲示板。様々なところに尋ね人の写真と情報があるが、そこに含まれる子供の人数はたいへんなものだ。
乳児の頃から子供を別の部屋で寝かせるのがこの国の習慣だが、アメリカ人の乳児がよく泣くのは多分にその影響らしい。自立心を養うというこの方法が、思わぬ副作用をもたらした事件がある。
ある日幼い子供がいなくなった。この両親も、日頃から子供に自立心を養わせようとしていた。言い方を変えれば、あまり監視をしていなかったのだ。親は子供が失踪したときの服装さえ知らなかった。子供の手がかりは全くなく、子供は帰ってこなかった。
この記事を書いた当時の統計によれば、アメリカでは毎年平均115人もの18歳以下の子供が「誘拐」されたと考えられている。横田めぐみさんの不幸な出来事が、この国では3日に1回起こっているようなものだ。さらに恐ろしいことに、犯人は北朝鮮から入り込んだ工作員ではなく、たぶんこの国に住む人間だということなのだ。ちなみに中共では、2020年に100万人の子供が行方不明になったという(中民社会救助研究院による)。毎日平均2700人以上が失踪した計算になる。一体どんな社会なのだ?
単純な失踪、例えば、親の経済的事情で夜逃げをしたり、ティーンエージャーが家出をしたりということも含めるならば、統計上何と6桁もの子供が消えているという。
もともと、物理的に通学できない子供の為の制度であった、家庭で親が先生代わりになって、義務教育の学習をさせる「ホームスクール」が、普通の家庭でも選択されることがあるのは、子供を取り巻く環境が厳しいせいもあるだろう。
■「食事教育」の貧困
前述の通り、共働きが殆どのこの国では、家庭教育において重要な役割を担う食事も、大きな問題を抱えている。
外食が多くなるのは勿論だが、それも価格の安いマクドナルドなどのファストフードやバフェ・レストラン(日本で言うところのバイキング)によく行くので、子供は偏食になりがちだ。子供の肥満が多いのは、運動不足はもちろんだが、そういったことも原因のひとつだろう。
一方母親が作る昼食の弁当はと言えば、勿論家庭にもよるが、日本の一般的な家庭の基準で言うと「手抜き」が多いという。酷いものになると、食パンにジャムとピーナッツバターを塗っただけのサンドイッチ(日本ではこれを「サンドイッチ」とさえ呼ばないだろう)とポテトチップスなどスナック菓子の小袋。飲み物は缶入りソーダ。夕食はマック&チーズ(ゆでたマカロニにチーズのソースをまぶしただけのもの。肉も野菜も入っていない)やTVディナー(フライドチキンやパスタなどの主菜とジャガイモやニンジンなどの付け合せ、デザートまでがひとつの箱に入っていて、電子レンジで温めればできあがる)で済ませる。筆者も若い頃ホームステイ先で「トマトは好きか」と尋ねられ、「Yes.」と答えると、夕食はトマトだけのサンドイッチだったという経験がある。親が子供に食べさせている野菜で最も多いものはフライドポテトだという、恐るべき調査結果が出るのも頷ける話だ。
子供が好む、糖分の多い食品の広告を規制しようとか、スーパーで子供の目線が来る棚に、そういった商品を置くのはけしからんとかいった議論が、大真面目で交わされている。全く本質的ではない、ばかげた話だ。そもそも親に食事を家庭教育のひとつだと考える意識がないならば、そんなことをしても何の意味もない。肥満になったのはハンバーガー・チェーンのせいだとか、肺癌になったのはタバコ会社のせいだとかいう、甘えた言いがかりと全く同じだ。
『歴史と教育』2009年6月号掲載の「咲都からのサイト」に加筆修正した。
【カバー写真】
成年者の誘拐・行方不明事件が発生した際に、テレビやラジオ、電光掲示板など、多種多様なメディアを通じて発令される警報であるAmber Alert(アンバー・アラート)を啓発する記念切手。アンバーとは1996年にテキサス州で誘拐・殺害された少女の名前に因んでいる(他説あり)。筆者も何度かラジオで聞いたことがあるが、被害者の特徴や犯人が運転する車の車種、ナンバー、逃げた方向などが、竜巻や嵐を知らせる緊急の気象警報と同じように、通常番組を何の予告もなく中断させて発信される。
【追記】
SNS上で2020年の大統領選挙で不正が報じられると同時に、アメリカ国内での子供の人身売買について、虚実様々な(たぶん、虚実が入り混じってると思うが、「実」だけだとすれば戦慄ものだ)情報が飛び交っている。実際、各地で人身売買組織が摘発されているようではあるのだが、「エプスタイン島」で行われているという恐るべき「儀式」が真実であるとは、常識的には思えないのだが…。ただ、選挙の不正を見ていると、この国には常識など通用しないことが明らかになってしまった。まぁ日本だって、主権国家としての常識がないのだけれど。
恐ろしい時代を私たちは迎えようとしているようだ。