#27 抹茶ティーラテ奮闘記

東京人間

ちょっと時間が空いたからスタバにでも寄って作業しよう。

自分がそんな人間になっているなんて、高校生の頃は想像していなかっただろう。

大学4年生、つまり私が東京で生活し始めて4年目だということと一致する。田舎出身だった私が、人気コーヒーチェーン店を使い慣れてきたのもちょうどこの頃だった。就職活動で都心に出て、いくつかの面接や選考が被った時は、わざわざ一度家に帰るのが面倒だからよくコーヒーチェーンを利用した。東京であれば、駅の近くを歩いていれば、頑張って探さなくても何かしらの店がある。時間を潰すことと次の準備をすることの両方を、確実に成し遂げられるのが何よりありがたかった。

ドトールも、タリーズもスタバも、もうどこだって気兼ねなく利用できる。何なら、ブラックコーヒーの味の違いだって分かるようになってきた。そんな感じでいかにも調子に乗っていた東京かぶれ大学生に、ある日ちょっとしたバツが下った。

トーキョーニンゲンvs.抹茶ティーラテ

例によって就活の資料読み込みのために、その日はスターバックスを利用した。いつもはブラックコーヒーしか頼まないのだが、何を思ったかその日は抹茶ティーラテを注文した。少しおしゃれレベル、あるいはスタバレベル?を上げようとでも思ってしまったのだろうか。

しかし、差し出されたのは見慣れない、特殊な構造をしたプラスチック容器で、私の頭は「?」になった。この抹茶ティーラテ、いつも頼んでいるアイスコーヒーブラックとは大きく異なる点がある。ホット商品だったのだ。

ここまではまあいい。ホットでもよくコンビニで飲むこともある。しかし、開け口なるものが見当たらなくてここで本当に「??」×100くらい頭が混乱した。

これどうやって飲むんだ?

でも私にもプライドがある。とっさに店員には聞けず「分かってます、いつも飲んでます」という雰囲気を醸し出して受け取り、席に着く。しかしやっぱり飲み方が分からない。ただ一カ所小さな穴が空いている。でも飲み物に続いている感じがしないし塞がっているようにも見える。ここにストローでも差すのか?ホットなのにまさかな。

自問自答を繰り返す。それでもやっぱり分からない。もう5分も10分も机の端に放置されて少し寂しそうな抹茶ティーラテ。

でも私にもプライドがある。両隣の人には飲み方が分からないと悟られないように必死に資料を読むふりをする。「席について早々に飲み物に手を付けるなんてはしたないこと、私はしないんですよ。」そんな余裕のあるそぶりをとる。ちなみに本当の私はすぐに飲む。

もういっそ、飲まずにこのまま持って帰ってしまおうか。そんなことも頭によぎる。開け方のことを考えることに10割脳みそを使ってしまっているから当然のこと作業どころではない。

そんなとき、一つの可能性を見出す。これもしかして、そのまま傾けて飲めるのか?

もうここまで来て、空ぶってもどうってことない。この可能性に賭けることにした。緊張がはしる。恐る恐る、だけどさっそうと見えるように小さな穴を口に運ぶ。

その刹那、ご褒美みたいな甘いラテが口に入ってきた。目からうろこ。衝撃の嵐。

よーし一息、集中集中、作業の続きしよう。そう周りには映るように、感動は心の内に秘められた。

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