自然遺産内部における破壊行為について【掌編】
「報告書上がってきたぞ」
「了解。今確認する」
「結局どの程度の被害だったんだ?」
「直径約10メートル程度の陥没かな、まだ詳しいことは確認中らしいけど」
「勿体無いことをするもんだな」
「これでも一応大切な自然遺産だもんね」
「一応って言うな、確かに閑職だけど」
「意外と景観は破壊されてないもんだよ?ほら」
「……あ〜、周りの感じでちょっと隠れてるけど、いやそれでも穴は穴だろ」
「自然はいずれ磨り減っていくものでしょ、場所が何処でもさ」
「10メートル穴開くまでに何年かかると思って────あ、また上がってきた」
「盗難被害もあったって。ふ〜ん、良かったじゃん」
「良かったじゃんじゃないだろ」
「や、だって俺たちの自然遺産ってことは、あの惑星03の生命体から見ても大切なんじゃないの?」
「そうだけど、でもさ……」
「自然遺産が自然遺産を破壊して何が悪いのさ、同じ銀河の中でやってるだけじゃん?」
「……まあ、そうだけど」
「あ。あの古代生命体サンプル群05が発展してくのが面白くないタイプ?」
「……古代の生活を見るの、結構楽しいんだよ」
「大丈夫だって、まだここから発展するにはだいぶ時間かかるでしょ」
「俺惑星03の色合い好きなんだもん」
「確かに惑星間エレベーターとか生えちゃったら萎えるけどさ〜まだ早いよそこまでは。っていうかそんなに好きならあっちの言語で呼称しないんだ?」
「確かにそういう愛好家はいるけど、発音が難しいんだよ。アー……ス?言えてる?」
「俺も正しい発音は知らないよ」
「あ〜あ、このままアー……惑星03が発展しちゃったら、この銀河とかこの惑星観測も娯楽として目立つんだろうな」
「せっかく割のいい仕事だったのにね、残念…………ん?」
「どうした?」
「本破壊行為における小型探査機構aが小惑星βに接近中だって。到着は11年後を予定」
「え〜、またかよ……」