私はなにでできている 〜作家との出会い〜
10代までのうちに好きになった・興味を持った、もしくは影響を受けたと思われる作家のことを書く。
区切り良く10人にしただけで、これが全てでも無い。
分野も、商業的なものから現代アートまで敢えてごちゃ混ぜにして選んだ。
出会った時期が古いほうから順に。
当時思ったことなどをなるべくそのままに書いた。
敬称略。
【1】エルサ・ベスコフ(1874年〜1953年)
作家、児童書のイラストレーター
出会った時期:5〜6歳
母親が絵本を一冊買ってくれるというので、じっくりと探したのち、私が選んだのはベスコフの「ラッセのにわで」。
登場する植物は全て個性豊かな妖精のように表現されており、すぐに夢中になった。
優しく親切なりんご婦人、悪戯なプラムの少女たち、貴族ないちご一家の行進。
全てが細やかなタッチで描かれていて、当時の私はとびきりお洒落だと思った。
物語のラストでみんな居なくなって(元の姿に戻って)現実に帰ってくる感じも印象に残った。
【2】チャック・ジョーンズ(1912年〜2002年)
アニメーター、漫画家、映画脚本家、プロデューサー、アニメ映画監督
出会った時期:5〜6歳
父親に半ば強制的に「トム&ジェリー」を見せられて育った。
中でもチャック・ジョーンズの担当回(2ndシーズン)が子ども心に「気になって」しまう。
絵のタッチがかっこいい。
擬人化した動物に「中身」があるというショッキングなシーンが度々あった。
当時の私は「シュール」という言葉を知らなかったけれど、「この訳が分からなさ(不条理さ)が面白い」のだとなんとなく理解していった。
フィ〜ガ〜〜ロ〜〜〜で有名な「オペラ騒動」はどこを切り取っても構図や色彩が綺麗。
【3】平沢 淑子(1939年〜2017年)
画家(元アナウンサー)
出会った時期:11歳
地元秋田の美術館に「Yoshiko in PARIS 平沢淑子アートの軌跡」という展覧会がやってきた。そして何故か家にチケットがあった。
母親に「こういうの好きかもしれないよ」と言われ、連れて行ってもらった。
原画を見たら鳥肌が立った。
簡単には入り込んで行けないような完成された一つの世界のようなものも感じた(「世界観」というものに触れたのだと思う)。
平沢さんご本人も会場にいらっしゃったけれど、緊張してしまって遠くから見ていることしかできなかった。
【4】岡本 太郎(1911年〜1996年)
芸術家
出会った時期:14〜15歳
「芸術は爆発だ」「芸術は呪術だ」。
最初に好きになったのは「森の掟」という絵。
真ん中の真っ赤なモンスターは一見強そうだけれど、背中にファスナーがある。
次に興味をもったのは「傷ましき腕」。
大きなリボン、縞模様の腕。
16歳の時に両親が青山の記念館に連れて行ってくれた。
母親曰く、館内に入った私は
「目が虚ろな状態のまま、何かに憑依されたかのように興奮し続けていた」
らしい。
よほど楽しかったのだろう。
(自分では「作品かっこいいな」と思ったことくらいしか記憶に無い)
【5】草間 彌生(1929年〜)
芸術家
出会った時期:15〜16歳
美術の教科書に載っていた巨大な南瓜の立体が印象的で、どんな人が創っているのか知りたくなった。
どこまでも続く水玉模様や網目模様は、ずっと見ていると何故か落ち着く感じがした。
力強いパワーが漲っているのと同時に、どこか可愛らしい雰囲気が作品にも作者自身にも見え隠れするように思った。
少女っぽさというか。
【6】谷口 真人(1982年〜)
美術家
出会った時期:16歳
都内に旅行に来た際、アートアワードトーキョー丸ノ内の最終審査の展覧会で「遭遇」。
作品の内側の鏡に映る愛らしい二次元の少女とは裏腹に、外側のアクリル板にべったりとくっ付いた絵の具がグロテスク。
でもなんだか妙に納得できてしまう感じが何故なのか分からず、どうにも消化不良でその夜は眠れなかった。
忘れられない。
【7】大橋裕之(1980年〜)
漫画家、俳優
出会った時期:16歳
ガラケーの小さな画面と睨めっこしながら日々楽しんでいたのは「1日1コマ」更新されるWeb連載のコミック。
その時に見つけたのが大橋裕之さんのサラッとした線で必要な物・事だけが描かれている漫画だった。
「本を読む」ということにおいてなかなか集中力が続かなかった私だったが、大橋さんの描くものがたりには吸い込まれるようにのめり込んでいった。
最初に読んだのは、主人公が何気なくついてしまった嘘に振り回される「伴くん」。
その後Web版だけでなく「音楽」の単行本を買ったり、過去の自費出版本を中野ブロードウェイから取り寄せたりした。
【8】ゲイリー・ベースマン(1960年〜)
アーティスト
出会った時期:17歳
人魚を愛す雪だるまは、自分が溶けて消えることによって湖となり、瀕死の彼女を助けることができる。
片足をなくしたウサギは、本当の足を取り戻す為に義足で歩き続ける。
ポップな絵柄に隠れた深い愛に心を揺さぶられながら、シニカルなイラスト的表現にどっぷりと浸かった。
【9】アネット・メサジェ(1943年〜)
美術家
出会った時期:17歳
カラフルな可愛さに油断して近づいてみると結構ヤバいものだったり、逆に遠目に恐ろしい化け物に見えるものがただの写真のコラージュだったり。
物事の本質を見抜くには、近すぎても遠すぎてもダメかもよ?と言われている気分になった。
どの作品も、画集に載っているのを見るだけでドキッとする。
ちょっと怖い。でも好き。
【10】鴻池 朋子(1960年〜)
現代アーティスト
出会った時期:17歳
地元の広報誌に載っているのを見て、興味を持つ。
作品自体はどっしりとした土着的テーマでありながら、様々な媒体を行き来する軽快さの絶妙なバランスに驚いた。
下半身だけの子ども、六本足のオオカミ、「みみお」など、彼女の創り出すキャラクターにも興味が湧いた。
トークショーを何度か聞きに行ったり、アートイベントに参加して少しだけお話したりしたことで、彼女の人柄を知り、憧れた。
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