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2024年秋学期の記録、思考
冬休みになって、年も明けて、まとまった時間ができたので大学院に入学してからの半年間のことをまとめようと思う。
大学院が始まる前は、毎月考えたことや感じたことをまとめようとか思っていたけど、実際そんな暇は全くなくてかなり忙しい半年間だった。
振り返りの時間を取れるのもそうだし、日本語で文章を書けるのもすごく嬉しい。
ここで文字に起こすのは、一番は自分の頭の中を整理するためというのがあるけど、実はこれを読んで「シアンスポで大学院生やりたい!」と思ってくれる人がいたらいいなとこっそり思っていないでもない。ので、簡単に私が今やっていることを紹介しておく。
私は日本の大学で学部を卒業して、去年の秋からフランスのシアンスポ(パリ政治学院)のマスターの過程に正規留学している。勉強しているのは国際政治、特に外交とか人権とかに重点の置かれているカリキュラムで、理論と実践の両方を学べるというのが特長。
私の大学院の良いところ
理論と実践の両方が学べるというのも、一番は先生たちのプロフィールに表れていると思う。このセメスターの授業では、コスタリカの元外務大臣の先生や、EU議会の元議員さんの先生とかがいた!
もちろん肩書きだけじゃなくて、さすがに話すのが上手なのと、先生たちの経験ベースで教えてくれるので面白かった。
今まで政治や外交に興味を持っていたけど、学部では専攻してなかったのもあってちゃんとこうして腰を据えて勉強できるのがすごく楽しい。
特にレポートやプレゼンテーションの課題のときは、テーマについてしっかり調べられて楽しかった。「なんとなく」じゃなくて「ここまでは言える」っていうふうに自信を持って言えるのが良い。
あとは環境!これについても褒めるところがたくさんある。
まずは同級生の仲間たちにはすごく刺激をもらってる。グループでやる課題の時とかは特に、視点の鋭さとか取り組み方とかすごく勉強になる。
あとはもちろん知識量、それで思い浮かぶのは同じ国際政治の学部にいるもう2人の日本人の子なんだけど、彼女たちは私が恥ずかしくなるくらい色んなことを知っていると思う。2人とは衆議院選挙のウォッチングパーティーをしたんだけど、2人とも自分の選挙区かどうかに関わらずめちゃくちゃ詳しくて、候補者の人たちをアイドルかスポーツ選手の話をするみたいに話していて驚嘆した。
外国のこと勉強する前に自分の国のことちゃんと知ってるのか??っていうのはここ最近自分に入れるツッコミなんだけど、正直耳が痛いよねこれは。もっと日本のこと、あとはアジアのこと、勉強したい。
それからもうちょっとロジスティックなところで言うと、キャリア面の学校からのサポートが手厚くて素晴らしいと思う。
キャリアセンターが定期的にゲストを呼んで講演会を開いたり、毎月ワークショップを開いたりしてる。(CVの書き方とか、インタビュー対策とか)
卒業要件に半年のインターンがあるのもそうなんだけど、学校に職業訓練所的な性格があるので、卒業後の進路を考えながら勉強をする環境が整ってる感じがする。
あとはこれは私がラッキーだったんだけど、学部長と朝ごはんを食べながらお話しをする企画があって、そこに抽選で選ばれて他の20人の学生と一緒に参加したりもした!
学部長とか結構遠い存在だけど、こうやってカジュアルに話す機会を作ろうとしてくれてるのはすばらしいと思う。
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大変だったことと若干の批判
でも苦労したこととか、学校生活での違和感もある。
まず英語。「くそ、英語わからん」とずっと思ってた。
分からない単語が一つでもあったり、聞き取れなかったりすると授業中に発言するのも躊躇ってしまうし、友達と話していても聞き手でいることが多いしで、日本語での自分とのギャップが大きくてちょっとつらかった。日本語だったら私はもっと賢いし、面白いんだぞ!
実は出願要件のIELTS7.0ぴったりで入学したんだけど、結構きつかったのでやはりぴったりじゃなくて7.5、8.0あると精神的に楽だろうなと思った。
でも、英語で授業で受けるのがシンプルに初めてだった割には、レポートもプレゼンテーションもなんとか英語でこなして頑張ったと思う。できないところばかりを見んじゃなくて、できるようになったところもしっかり見るように心がけたいものだね。
英語で苦しんだ1学期目だったけど、半年前よりは確実にうまくなったと思うし、あと1年半英語の環境にいたら向上しかしないと思うので引き続き頑張りたい。
あとは、全体としてかなりWestern-centricだと感じることが多かった。雑に言うと、授業で取り扱う内容が、EUとアメリカばかりだった。
単に現代の国際政治のリアリティが反映されているだけなのかもしれないけど、日本人としては自分の国、ひいてはアジアが隅に置かれている感覚が結構あった。もちろんこれは日本経済の停滞や、日本の外交アクターとしてのプレゼンスの低さを表しているのでもあると思う。でもそれを差し引いても、もっと東南アジアやアフリカ、ラテンアメリカの話をしてもいい気がしてる。
逆にアメリカから来ている子が、「せっかくヨーロッパに来て新しいことを勉強できると思ったのに、ここに来てもアメリカの話ばかりしていてうんざりしてる」というようなことを言っていたのも印象的だった。
例えば、政策立案の授業で各国の政治制度(大統領制とか議院内閣制とか)を何週かかけて詳しく勉強したんだけど、そこの吟味の対象になってたのはEU議会とアメリカ下院だった。っていうのは分かりやすい例で、もうちょっと目立たないWestern-centricもあったなと思ってる。
インターセクショナリティについての授業と「ジェンダーと人権」っていう授業も取ってたんだけど、そこでの議論がほぼ毎回「白人/黒人」「西洋諸国/イスラム教国」の構造だった。歴史的にも現代の対立的にも、そういう構造の議論になるのは分かるし全く否定はしないんだけど、「自分の立ち位置この中でどこ??」ってなることは多かったかな。
こういう「ジェンダー」とか「人権」みたいなユニバーサルなテーマの名の下に、欧米特有の問いの立て方をしてる感じがした。
そもそもインターセクショナリティの概念がその構造の中で生まれたものだから自然なことなんだとは思う。でも「ジェンダーと人権」の授業に関しては、先生もっとアジアの話しても良いじゃん(韓国の4B運動の話とか、タイの同性婚の話とか)とは思った。
きっとここら辺は、例えばアメリカや日本で国際政治を勉強していたら全然違う感想を持っただろうなと思う。「International」という言葉で説明されるものの実態は多様だということと、私はあくまでもフランスでそれを勉強していることを忘れないでおきたいよね。
でも語弊のないようにしっかり書いておきたい!どの授業も総合的にすごくおもしろかった。次のセメスターもとても楽しみ。
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進路に関して考えたこと
最後にこのセメスターを通して、卒業後の職業についての考えが少し変わったので書き残しておく。
結局すごく平凡だしちょっと子供っぽいかもしれないんだけど、社会を良くしたい!みたいなのが私の職業目標の根底にあって、そこは今も変わってない。し、昨今のニュースを見ていると本当に怒りと不安と焦りが溢れてきて、何かしなきゃいけないっていう気持ちは強くなっている。
もともと日本での政治への無関心に問題意識があって、みんなで理想の社会を掲げてそのために考えたり声をあげたりできるようにしたい、そのためにジャーナリストになって埋もれた課題に光を当てたり、新しい視点を提供したりしたい、っていうふうに考えてた。
でもこのセメスターでもうちょっと政治のシステムの方をちゃんと勉強して、あとは今年あった色んな選挙やニュースを見ていて、ちょっと考えが変わった。
まずは月並みな指摘ではあるんだけど、現代の情報の発信の仕方受け取り方を考えた時に、みんな自分と同じ意見を持った人の情報、自分の聞きたい情報しか受け取らないこのエコーチェンバー状態でジャーナリストとして戦うことにちょっと光が見えないなと感じてしまった。
むしろ、そういう状態だからこそ発信し続けることや、メディアの世界に関わって関わって良くしていくことが大切なんだと思う。ジャーナリストの仕事の重要さは増していくばかりだと思う。だからジャーナリストの仕事を否定したりは全くしない。
でもシアンスポの授業で政策やルールを作る側の仕事というのを発見して、「そういう関わり方もありだな」と思った。ルールメイクの世界がどういうふうに動いているのかを学んで、ジャーナリストとして市民に呼びかけるよりももっとダイレクトな方法で関われることに魅力を感じた。
あともう一つ、他の視点も最後に付け加えておく。
これは同じマスターの子Tちゃんが話していて結構スッキリした見方なんだけど、Tちゃんは私たちみたいな政治を勉強して就く職業を「バリューメイキング」と「ガバナンス」の2つに分けてた。
バリューメイキングは、人権を守ろうとか、環境破壊をやめようとか、格差をなくそうとか、そういう「価値観」的なものの大切さを訴えること。対してガバナンスは、それこそ政治とか法律とか、社会に関わるルールづくりのこと。
で、私はこれまでアプローチ的にバリューメイキングの方にいたと思う。自分が社会にとって大切だと思うことの大切さを知ってもらうために情報を発信したいと思ってた。でもその一方で、ただ自分たちが大切だと思うことを叫び続けることの非建設さみたいなものもどこかで感じてた。みんなが自分の価値観を叫び続けて、それに反する人たちを批判し続けても、妥協点は見つからないし結局何も進まないのでは、って。
今の世界が分断してるのもそういうところにあると思うんだよね。そしてそれにメディアが関わってるのはいうまでもなく。
だから、Tちゃんがいうようなガバナンスの立場で、複数の意見聞きながらルールメイクする方に関わりたいかもと思った。
これはもちろんTちゃんの話を私なりに解釈したわけなんだけど、伝わるかな。
最後のは職業への選択に直接関わるというよりかは、国際政治っていう世界の私なりの新しい見方という感じかも。
まあいくら私がこういう仕事に就きたい!と決めたところで、選んでもらわないと始まらない部分もあるわけだし、自分の目で見てみないと分からないものでもあるから、特にこの夏からのインターンは広く探そうと思ってる。
どれもこれも、このたった半年間のセメスターに私が見聞きしたものベースなので、次のセメスターが終わってから書いたら違うことを言っているかも。
さすがに月1は難しかったけど、セメスターごとにちゃんと書き残せるといいなあ。まずはこれから始まる春学期を頑張って、また半年後振り返るわ。