【エッセイ】自己紹介という宿題(小学生編)
挨拶
読者諸君、ご機嫌よう。今回は非常にありがたいエッセイになる。お坊さんの法話を聴くような気持ちで私の話を聞いてほしい。今、諸君らは我が宗派の檀家である。
姿勢を正してくれて構わない。是非、正座で拝聴をしたまえ。きっと数時間後には、感動と足の痺れで涙を流していることだろう。
法話を拝聴後、諸君らには我が人徳を人口に広く膾炙させるよう働くことを求める。善は急げというので、正座から素早く爆走態勢に切り替え、近所中に有り難いお言葉による感動と効用を伝えてほしい。
今日することは
さて、蛇足は放り投げておくか、吐き捨てておこう。前置きが長いのは私の特徴であり、ポリシーであるが、諸君らが真に受ける必要はない。
今回は自己紹介をする。仕方なく、訳あって自己紹介をする。本当は、矮小な自らの遍歴など、披露するに足らない。私はもともと、管を以て天を窺う無知蒙昧ぶりが定評を博していたのだ。才能もなければ努力もしてこなかった人間の浅はかな歴史など、誰が聞きたいか。いや、聞きたい人などいないだろう。………すまぬ。勢い余って思わず反語である。
卑屈になっていては、何も始まらない。御託はさすがに飽きた。ようやく自己紹介に入ろう。
自己紹介をしてみる
そもそも名乗った事など今までなかった。アカウントの自己紹介欄ですら、斜に構えた阿呆丸出しの醜態を晒している。ここまでの我が手記にスキをした諸君は、得体の知れない男の平仄の合わぬ文章によくぞ好感を持ってくれた。改めて読者諸君には感謝したい。
そろそろ身の上話の口火を切ろう。手短に名乗る。性は伊藤だ。性だけで十分であろう。名は、いずれ私が何かしらの形で勇名を馳せたとき、自然と諸君らの耳に届く。あざなはいつか欲しいと思っている。ミドルネームもそのうち貰えると嬉しい。
私は社会人1年目だ。メガバンクグループの子会社であくせく働いている。一応、IT系と言えよう。毎日、諸君らが使う銀行やカードローンのシステムを支えているのが私だ。こう言えば、立派に勤めているようで聞こえが良い。実際はミスばかりの雑魚であるから注意してもらいたい。
仕事中は主に、帰宅してからどんなことを書こうかと夢想している。邪で要領が悪く、かつ仕事に向き合わない畜生が私だ。いつか足を洗って世に出直したい。
現状の紹介はこんなものだろう。いや、紹介とはこんなものではない気がする。果たしてこんなにも酷い紹介を読む人間はnoteに存在するのだろうか。何1つ明るい要素がない。まぁいい。何が良いか分からないままに話を進めることにする。ひとまず過去を回想しよう。
我が小学生時代
非常におとなしい子供であった。おとなしい子供にありがちだが、ハリーポッターを全て読破していた。当時の私は、ハリーポッターは好きだが、本派というマイノリティである。映画も鑑賞したが物足りなさを感じていた。友達と話が合わなかったことを思い出す。
「伊藤! ハリーポッター見たかよ」
「見た」
「エマワトソンめちゃくちゃ可愛いくね。俺、顔がすげータイプなんだよ」
「えまわとそん?」
「ハーマイオニーだよ」
「あぁ。なるほど」
「可愛いよな。クラスの女子とは比べものになんねぇよ」
「そうか? 俺の想像したハーマイオニーの方が可愛かったけどな」
「なんだ想像したハーマイオニーって」
「一緒にホグズミート行ったり、ホグワーツ探検したり」
「何言ってんだ。変なこと言ってっと俺の魔法で伊藤をネズミに変えて……」
「アバダケダブラ!!!」
シリアスな場面を思い出してしまった。先んずれば人を制すことを当時から理解していた伊藤少年の一撃が見事に決まった瞬間である。ちなみにこの友達は今もご存命だ。安心してくれたまえ。私に魔術の才はない。その後、その子とあまり喋ることこそ無くなったが。
スポーツをしていた
一応、運動音痴ではないぞ。おとなしい子供ではあるが、小学生の頃からサッカーを始めたのだ。どちらかというと、させられていたに近い。
我が一家は活発に運動する。二人の弟もボールを蹴りまくって日々を過ごしている。ちなみに父親は野球、母親はソフトボール経験者だ。そのせいで半ば強制的にチームスポーツへの参加させられた。何故そんなバリバリの家族に、私という陰惨な長男が生まれてしまったのかは誰にも分からない。
しかし、蹴球に良き思い出がない。唯一褒められたのは、所属していたチームを卒業するとき、低学年の後輩にかけられたお世辞ぐらいだろう。
「伊藤君のダイナミックなシュートがとてもかっこ良かったです。いつも腰が抜けそうでした。今度教えてください」
私は基本的に守備をする人間で、シュートなんぞは殆ど打たなかった。そもそも試合にすらあまり出ていない。彼が何を見て腰を抜かしたのかは未だに謎である。
前編終了。そういえば、自己紹介をする理由は……。
眠くなってきた。今日はこの辺りで幕間としよう。忘れていたが、自己紹介をする理由は、宿題が出されているからである。
予てより、シナリオ作家になるための学校に通っている。そこで出された課題が、自己紹介の作成なのだ。どうせ作るのならnoteで晒してから、整えようと思ったまで。
まとめると
ここまでの私を纏めると、IT系で働くおとなしいサッカー経験者である。なんと凡庸で芸の無い人間だろうか。しかし、私という人間が芽を出すのはこの後からである。諸君らは後編に期待してほしい。