「火打ち材」がない物件は瑕疵なのか
1 はじめに
瑕疵紛争をやっていると、消費者側からよく受ける主張の一つとして、「火打ち土台がない」という主張があります。
建築基準法施行令46条3項は、次のように規定しています。
なるほど、これだけ見ると、法令上も火打ち材の施工を求めているように読めるので、火打ち土台がない、という主張を受けると法令違反の瑕疵だとして、反論を諦めてしまう代理人もいるようです。
事実、裁判例で上記法令に関する事案を検索すると、火打ち材がないということで、簡単に瑕疵を認定され、損害賠償請求を肯定されている事案がいくつか出てきます。
ただ、現代の建物において、火打ち材は本当に必要な部材でしょうか。
例えば、大橋好光著『木造建築の構造 阪神・淡路大震災から現在まで』(建築技術)188頁には、令46条3項について、「この規定は、かつては主流だった、柱が玉石に載っていて、足固めなどで柱脚をつなぎ、床剛性のない構法に必要な規定」としていますが、現代においては、玉石基礎での施工は古民家のリフォームなどの場合を除き、そもそも行われていないでしょう。そのため、同書籍は現代構法における火打ち材の位置づけについて、次のように指摘しています。
こうなってくると、現代構法で建築された物件に火打ち材がないとして、それは設計瑕疵や施工瑕疵になるのでしょうか(設計図書に記載されているのに、施工されていない場合は、合意違反の瑕疵にはあたってしまうと思いますので、主に設計瑕疵の問題になるとは思います)。
私個人は、火打ち材がなかったとしても瑕疵該当性は否定されるべきと考えていますので、以下私見を展開してみたいと思います。
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