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20240316学習ノート『三つのインタナショナルの歴史』第25章-3 祖国防衛

20240316
[祖国防衛]

 この戦争を支持するために社会民主主義諸党が掲げたスローガンが、「祖国防衛」というものである。このブルジョア的スローガンを、彼らはマルクス主義と見せかけることに苦心した。「この戦争は民族戦争であり、いまや国民の利益が重大な危機に瀕している。したがって、自分たちが戦争を支持することは正しい」というものである。そして、「攻撃軍が国境に迫っているこの時に、自分たちの祖国も自ら防衛するしかない」とした。彼らはこうした方針を、ブルジョアジーの言葉とほとんど区別のつかないような言葉で騒々しく喚き立てた。カウツキーの傾向に立つ中央派は、さらにずる賢く立ち回った。一見戦争に反対するようなそぶりを見せ、戦争支持を偽装しようとしたのだ。

 修正主義者フォルマールは、次のように言った。「現在、全ドイツ国民は、何ものも抑えることのできない一つの意思に励まされている。すなわち、祖国と、その独立、その文化的組織を、祖国を包囲する敵から守り、この敵を打ち倒すまで断じてやまないという意思である」

 フィリップ・シャイデマンは、ドイツの社会排外主義者を代表して行った演説でこう言った。「現在の戦争に主として罪があるのはロシアである。ツァーリは、明らかに平和の方向で動いていたドイツの皇帝(カイザー)と文書を往復しながら、その同じ瞬間に一方では、秘密に動員を進めることを裁可していた。その動員は、単にオーストリアだけでなく、ドイツをも目掛けたものであった。ドイツに生を受けた我々は、自らを守る義務を持っている。我々は、もっと進んだ社会民主主義の国がロシアの奴隷となるようなことのないように、これを守り抜く任務を持っている。我々社会民主主義者は、社会主義インタナショナルに参加しているからといって、ドイツ人であることをやめたわけではない」

 ドイツの社会民主主義者はこのように戦争を祖国防衛として支持する表明をしたが、フランス、イギリス、ベルギー、アメリカなど、そのほかの社会排外主義者は、ドイツこそが自分たちの祖国を脅かすものだと主張していた。

 ドイツの社会民主主義者たちは、より巧妙な議論を編み出し、革命的な労働者を戦争の罠に引き込もうとした。カウツキーは、この戦争は祖国防衛だという立場をとりながら、戦争反対を偽装した。それは、戦時公債に反対投票はせず、投票の際に棄権するというやり方である。奇妙なことに、修正主義者のベルンシュタインも、カウツキーの陣営に加わった。カウツキーは、戦争は帝国主義的でもあれば民族的でもあるという、謎の理論を押し通した人間である。彼は、「諸小国がその生存のために戦っている」と述べ、続けてこう言った。「がっちり基礎の固まっている大民族国家については、事業は違っている。確かにその独立は脅かされておらず、また見たところその領土保全が脅かされているということもない」と。これは、大国にとってはこの戦争が防衛戦争ではないことを意味している。それなのに、労働者に対しては全く逆のことを述べ、労働者に自国の政府を支持するよう呼びかけたのだ。「しかし、ここからまた、諸国の社会民主党にとって、その次の義務が生じてくる。すなわち諸国の党は、この戦争をもっぱら防衛的な戦争とみなし、その目標も敵国からの防衛ということにだけ限り、敵国の「懲罰」や縮小を目指してはならぬということである」と。

 カウツキーは卑劣な手段を使った。「正統派」マルクス主義の名を利用して、インタナショナルの取った道は他になかったのだと証明して見せようとした。彼は、世界情勢はあまりに複雑なので戦争に反対するプロレタリアートを一つにまとめることは難しいと言った。
「そういうわけで、現在の戦争は、インタナショナルの力の限界を示している。もし我々が、世界戦争のさなかに、インタナショナルの力で世界中の社会主義プロレタリアートの一糸乱れぬ統一を確保し得ると期待するとなれば、それはわれと(おのずと)自らを欺くものである。そのような状態は、ほんの2、3の特別に単純な場合にだけ可能だったことである。世界戦争のために社会主義者はいろいろな陣営に分布し、特に民族別の陣営に分布している。インタナショナルは、それを防ぎ止めることができなかった。ということはつまり、インタナショナルは、戦争に際しては役に立たぬ道具だということである。それは本質的に平和の道具なのである」
 このようなカウツキーの主張にあるように、右翼と中央派は一体となり、「祖国防衛」の名の下に戦争を遂行したのだ。マルクスとエンゲルスの「労働者の連帯」という教訓を、いくつかの社会主義党は捨て去り、それぞれ自国の労働者に向かって、皆殺しの戦争の組織者である世界帝国主義者の命令のもと、この戦争に加わるように呼びかけたのだ。


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