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2025神奈川県立高校入試(国語)の所感

バレンタインデーに高校入試をぶつけることでお馴染みの神奈川県。
本日2/14(金)に選抜試験が実施された。

大変天気に恵まれ絶好の入試日和ではあったが、自分は花粉のせいか常に鼻がムズムズしていた。
ある高校では、バレンタインデーも入試も義理(ギリ)でオッケー!なんて文言をグラウンドに書く高校生がいたらしいが、ギリギリでなんとかなってくれればいいんだけどな〜と思う所存。
特色検査実施校は2/17(月)に特色検査が実施されるので、まだまだ気が抜けない段階ではあるが、所感をここに残しておきたい。

前年度と比較して各大問の個人的難易度は以下に示す通りだった。

大問1:普通
大問2:易化
大問3:易化
大問4:普通
大問5:普通


総括:全体的に易化。昨年よりも平均点は高くなるだろう。国語を得点源としている生徒にとっては周りと差がつかない反面、ポカミスをすると周囲と差がついてしまう。

近年の傾向

神奈川県入試の国語は文章あたりの文字数が多く、中学生に対して文章を読む基礎体力を求めている。それに加えて近年は、国語に限らず大学入試共通テストでの問題形式を模倣した出題を行うことが多くなってきている。実際に英語では長文の文章量・広告や表の量が増えており、TOEICの問題形式にも類似した出題が見られる。今後も数学や理科で、問題形式の大幅な変更が行われる可能性がある。
国語においても昨年から大問5の資料読み取り作文において、複数のテキストから内容を読み取り書き出しに続けて内容を要約する問題が出題されている。

令和四年度以降から古文が大問2から大問4に移動していたりと、「問題形式が不変である」といったステレオタイプには要注意だ。
選択肢が四択から八択に増加、小説・説明文での40字程度の記述問題の傾向の復活、大問4に唐突な漢文の出題などの可能性も否定できない。今後も動向に注目。

大問1:漢字の読み書き・俳句の鑑賞文

漢字は中学1ー3年生レベルの出題であった。県入試レベルの漢字の最良の対策は日々の漢字学習なのだと思う。

鑑賞文が少し難しい。
左右なる去年今年が対応していることに気が付けば、俳句内で記述のない選択肢を消去して正答4番を導ける。

大問2: 小説

神奈川県は江戸時代の職人の苦労話といった歴史小説の出題が多く、中学生だと背景知識がないと読みにくいことが多い。
本年は、水墨画家である主人公が水墨画教室を引き受けた際に、純粋な子どもを通じて絵を描く楽しさを再実感するといったシンプルな小説で、心情描写が直接的になされている課題文のため、非常に読みやすかった。

出題内容もやはり傍線部の理由、説明、人物の心情を問う3パターンの問題に留まっており、いずれも課題文の傍線部の直前直後に回答の根拠が記述されている。

そのため、難易度は易化したと考える。


大問3:説明文

昨年のファッションをコミュニケーションと見なした抽象度の高い哲学的な文章に続き、デジタルネイティブ世代の中学生への問題提起とも捉えられる哲学的な説明文の出題となった。

VR空間等を用いた自己デザインによって他者からの承認を容易に得ることができ、誰もがなりたい「私」になることのできる現代社会と技術を肯定し評価する一方、取り繕うことのできない自己デザインの「有限性」こそが「私」が他者とは異なる「私」たり得る要因だという筆者の主張を読み取れれば、正答の選択肢を消去法で導けたと思う。

ほとんどの問題が接続語・対義語・助動詞の判別や、傍線の説明・理由の四択問題といった例年通りの傾向を示した。新傾向として、文章全体を通じた内容一致問題が2題に増えている。記号問題であったため、受験生は動揺することなく解き進められたはずだ。

(エ)傍線部の理由を問う問題。後ろ4行目の文末に「-からである。」以前の文章に注目すればOK
(オ)指示語に注目して本文と選択肢を参照したい。傍線部の指示語「ここには」が指示する言葉は「自己デザイン志向が優位になる空間」である。「ポジティブな可能性」とはメタバースといった空間に「現実世界の制約を打ち破る柔軟な可塑性」があること。過不足なくこれらの内容が述べられている選択肢を選びたい。
(キ)傍線部以前の10行程度と以後3行程度が根拠となる。これらの内容をまとめると、
•「自己デザインの限界」とは、デザインしきれない「私」の有限性が際立つこと。
•「私」の有限性をいつまでも放っておくと現実世界とデザインされた自分の境界線が曖昧になっていき、自分がどういう存在なのかわからなくなること。
この内容が整理できていれば、他の選択肢の不適切な箇所に気付き、消去法で解くことができる。
(ク)筆者は「弱さや脆さ」が「私の絶対性」だと肯定的に捉えている。「弱さ」を克服する旨の選択肢は当てはまらない。

大問4:古文

この文章に限らず、登場人物が多い古文は「誰が」「何をしているか」が不明瞭になりやすい。最初にそれぞれの役割関係を整理することが大事。
キーパーソンが地下の公文と青砥座衛門だと気づくこと、誰が誰に話しかけているか、青砥座衛門の行動の理由が読み取れれば、意訳・記号選択ともにできただろう。

標準的な難易度の古文の出題であったと考える。

大問5:資料読み取り作文

昨年に引き続き2つの文章が示され、生徒のメモ・まとめの文章の空欄に当てはまる語句を選択・記述する問題が出題された。
(ア)は空欄補充の形で、提示された文章1.2の内容に当てはまる語句を選ぶ問題で、文章が読めていれば正答を選べるだろう。
(イ)は「短期間」「特別」という必須語句を用いて手紙でのやりとりの長所・短所についてまとめる内容要約問題である。文章1に手紙の短所、文章2に手紙の長所が記述されているため、それぞれ文章を抜き出して合体させれば、模範解答通りの回答が可能だろう。


終わりに

入試が終わった中学生のみなさんはお疲れ様でした。本気で頑張ってきた今までの日々に対して、受験というのは案外ひっそりしれっと終わるものです。

15歳という年齢で高校入試を通じて自分の将来のことや15ー18歳で身を置く環境について考えた経験は間違い無く人生の糧になります。勉強は、「なりたい自分になる」自己実現という人生の目的を達成するための手段です。しばらくは日々の生活に身を任せて、結果を待ちましょう。

特色検査を控えている皆さん、ここからが勝負です。最後までやり切って、これからの人生の門扉を叩くことにしましょう。
神奈川県受験生の健闘を祈ります。

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