代表者が次の選挙に出る予定の「あなたのいばしょ」の身体検査

2024年9月25日
(9/26微修正)

一部界隈が水面下でちょっとざわついているNPO法人「あなたのいばしょ」について、実際のとこどうなのか調べて発表してよと依頼があったんで書きました。

→ 9/25に報道がありましたので別に水面下の話ではなくなりました。報道前は選挙と書くのははばかられたので「今秋のイベント」とぼかしていますが読み替えてください。

本記事は誹謗中傷や団体への批判を目的としたものではなく、『東京都における「NPO法の運用方針」』でも想定されている、市民としての疑問を提示するものですから、あなたのいばしょ様においてはその点の誤解をなさらないようお願いします。

法では、「NPO法人は、自らに関する情報を積極的に公開することによって市民からの信頼を得て、市民によって育てられていくもの」との考えに立ち、広範な情報公開制度を設けています。ここでは、市民のチェックによる緩やかな監督、あるいはそれに基づくNPO法人の自浄作用による改善、発展が期待されています。
このような法の理念に照らしてみると、NPO法人に関する情報は、できる限り広く市民相互に提供され、かつ、共有されることが望まれます。これにより、市民にとって、当該NPO法人について有益な活動が行われていると認め、これに積極的に参加するという機会や、何らかの疑問を抱き、これに説明や改善を求めるという機会が提供されることとなります。
また、NPO法人にとっても広く市民からの支援を得たり、自身への疑問を払拭したりする契機が与えられます。
このような市民社会の実現に向けて、行政としても、こうした市民による選択・監視機能が一層発揮されるための環境を整備していくことが重要です。

東京都における「NPO法の運用方針」より引用

1、前置き:あなたのいばしょとは

2020年3月、慶應義塾大学(SFC)在学中の大空幸星が、自分にとっての先生のように、誰もが問題を抱えた時、頼れる人に確実にアクセスできる仕組みをつくりたい」という思いで、設立した。日本初の24時間365日無料でチャット相談できる窓口

上記ウィキより
  • Wikiによると以上の通りだそうです。

  • その相談件数の推移をまとめると、2020年度は約4万件。

  • 2021年度は約25万件、2022年度は約32万件。

  • 2023年度はちょっと情報源が弱いですが、約34万件だったそうです。

https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/localplatform/r05_houkokusho/pdf/15_gaiyou.pdf#page=4

  • 各所から拾った数値ですが、7+25+32+34で約95万件、2023年度終わりか2024年度早々に、公式に相談の総件数100万件を達成したと発表しているので概ね正しそうな感じです。

  • この件数を見てもわかるように、わずか数年で急成長を遂げ、タレントで代表者の大空氏共々、今やメディアにも多数とりあげられる、「自殺業界」のトップ企業の仲間入りを果たしています。

  • 私個人としては特に悪感情を持っていません。むしろメディアで目にする代表者の大空氏は頭の回転も速い好青年という印象で、好感を持っているというのが正直なところです。

2、ポイント

① 背景の不透明さ

  • 企業として急成長したのはもちろん代表者をはじめ、スタッフの方々の努力の賜物であろうとは思いますが、その洋々たる前途が『誰か』に舗装されていたと想像する余地があるのも確かです。

  • 団体設立早々に「厚生労働省支援情報検索サイト」に採択され、その翌年度から自殺対策事業で1.7億円の補助金の交付決定を受けたことや、設立初年度から加藤内閣官房長官へ「提言」を行う等の政治関連の動き、また実績が少ない内から多数メディアに露出していること等からは、代表者の大空氏のタレントとしての魅力を加味したとしても、『誰か』の引き合いを感じない方が無理があります。

下記URLより
下記URLより
2021年10月の補助金は7月分の交付額改定なので注意。
  • 特に1.7億円の補助金に関しては、その前年度の「あなたのいばしょ」の事業規模が収入額2百万円、支出額にいたっては30万円に過ぎない事業規模の、経験不足な創業2年目の事業者であった点を踏まえると、不可思議です。

東京都NPO法人ポータルサイトより
  • まとめると、事実か事実でないかではなく、「あなたのいばしょ」は『誰か』に作られた存在との印象は拭い難く、そのバックボーンについて多くの方々が納得するストーリーがなければ、この「特権階級」的エピソードが反感を呼び、今秋のイベントに影を落としかねません。

② 公金の使途について1

  • 上記は印象の話ですが、こちらはより実際的な意味を持ちます。

  • いわゆるColabo問題の出始めの頃、左派活動家の藤田氏と大空氏が交わした舌戦を皆さん覚えておられるでしょうか。

  • 藤田氏は創業2年目の2021年度に「あなたのいばしょ」が1.5億円(正確には1.7億円の補助金を受け、使わなかった0.2億円を返還)の補助金の内、その大半を業務委託費としたことを指摘しています。

  • それに対して大空氏は事業の基幹となるチャット相談システムについて「開発費用を委託した」とTwitterで明言しているのです。

  • 同社の収入の9割以上は国庫補助金であり、藤田氏の「外注費(委託費)」とやらの原資が補助金であるとの指摘を大空氏は否定していません。

東京都NPO法人ポータルサイトより
  • この指摘にもあるように、国の補助金をソフトウェア投資に使ったことは団体自身が決算書類に記載しています。

  • 多年度にわたって使用するシステムの整備費用は、本来は固定資産に計上するか、もしくは収入と固定資産を相殺(圧縮記帳)するのが一般的です。

  • これを補助金収入と共に単年の経費と計上しているのはNPO法で定める簿記の原則に沿った経理にはならないように思いますし、またそのような仕訳を行った動機が後述の補助金の要綱を潜脱する目的なのであれば問題です。

  • 当該「セーフティネット強化交付金」の当時の公募要綱等を見たところ(というか、どんな国庫補助金でも一緒ですが)、固定資産投資等を支援することにはなっていません。補助対象は直接事業費のみです。

  • 下記アーカイブURL中段、4予算関連等 (3)新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金 ➡ 二次公募 ➡ 公募要綱

https://web.archive.org/web/20210725065437/https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000794312.pdf#page=9

  • 「あなたのいばしょ」の厚労省の補助金資料はR5年度分しか手元になく、R3年度分・R4年度分は所持していないため、どのような費目で申請し、認められたのかはわかりませんが、資金使途が妥当でない可能性があります。

  • 開発費用を月額料金に付加して長期分割払いするようなシステム案件もなくはないですが、2021年度の業務委託費が90百万円なのに対して、2022年度、2023年度の業務委託費は30百万円程度に収まっていることからも、2021年度に一過性の多額の資金が支出されたことは明らかに思えます。

  • そもそも、この補助事業は「事業遂行能力を持つ団体」に「事業を遂行するためのお金」を補助するもののように見えます

  • 団体の体制強化的な主旨が含まれていないとは言いませんが、「創業2年目で自力では事業を遂行できない団体」に対して「事業遂行能力をつける投資資金」を補助するものではないように思うのですが、どうなんでしょうか。

  • また、別のもっと単純な疑問として、補助金が交付決定されたのは2021年度の夏季で、一般論として2022年3月末までの事業にウン千万円以上のシステム構築が間に合うとも思えません。

  • もちろんモノにもよりますが、普通は要件定義や基本設計に数か月、開発に半年、試運転に1か月といったところだと思います。まともに開発するとなると年度内に検収と運用までこぎつけられない気がするんですが。

  • 何故か補助金が付く前提で前もって開発を進めていたか、実際には価格相応のシステムではなかったのか等の邪推を招きそうです。

  • 私の上記の考え方に誤りがなければ、誰が描いた絵かは知りませんが非常に問題だと思います。

  • 少なくとも今秋のイベントが本格的に始まる前に、公式に説明をさせるべきではあるでしょう。

仮に資金使途に説明がついても、
この条項は大丈夫なのか心配。

③ 公金の使途について2

  • また、上述の問題は別の問題も孕んでいます。

  • その資金使途が適切かどうかとは別ベクトルの問題として、結果的にお国のお金で整備した固定資産がお国の事業だけに使われているならば、その問題は相対的に小さいと言えます。

  • しかしながら実際には「あなたのいばしょ」は自主事業等の比率も高い様子です。

上記と下記URLより
  • これには2つの問題点があって、1つはチャット相談システムを2021年度の補助金で整備したのだとしたら、何の根拠があってそれを自主事業に用いているのか?という点。

  • もう1つは同社はお国からの補助事業収入がほとんど(当初は9割以上、直近期でも8割以上)で、補助金は経費相当額以上は出ないことを踏まえると、費用のほとんどもまたお国の補助事業のためのものであるはずですが、じゃあ自主事業の経費ってどこから捻出してるの?という点です。

  • 以下のように簡単にまとめると、国の補助事業費の82%で相談件数の38%をこなし、その他の18%の財源から残り62%の相談件数に対応する経費を捻出していることになります。

厳密には収入よりも支出が若干多いので自主事業費用は
もう少し多く見てもいいですが、まあ誤差の範囲。
  • 収入がない分は別にボランティアでやってるなら大いに結構なのですが、それならそれで事業規模相応の経費計上とそれによる赤字が発生していないと勘定が合いません。

  • お国の基準に合わない事業をお国の補助事業の経費を付け替えてをやってんじゃないの?という邪推を招きかねない気もするんですが、その辺りはどうなんですかね。

  • もちろん色々と事情があるのかもしれませんが、単純に数字を眺めると奇異に見えます。

  • この辺りも今秋のイベントの本格始動前に確り説明させた方がいいんじゃないですか。

  • ちなみにお国の事業の成果は以下に記載があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/001234346.pdf#page=3

https://www.mhlw.go.jp/content/000987379.pdf#page=3

https://www.mhlw.go.jp/content/001271372.pdf#page=3

  • もちろん、SNS相談事業がお国の補助事業の全てではない可能性もありますので、決めつけは禁物です。

  • しかしながら唯一開示請求資料が手元にある、令和5年度事業では3年連続で採択されている2種類の補助事業それぞれの添付資料にSNS相談事業の「事業実施確認事項書」が含まれていることから、お国の補助事業=SNS相談事業という解釈は合っていそうな気はします。

3、まとめ

  • 以上の通り、別に問題ありと決まったわけではないものの、今秋のイベントに差し障りかねない要素はいくつもあるように思えますが、その辺りの整理はしっかりつけて、あれこれしてるんでしょうかね。

  • 個人的には心配です。必要ならばきちんと広く説明をさせて、無用な疑いであればそれを晴らすようご指導なさった方がご賢明ではないでしょうか?

以上

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