兵庫県職員アンケートを私的制裁に使ったかもしれない百条委員会の出す情報はよく吟味しようという話
2024年11月21日
私は特に斎藤知事を支持する立場ではありません。
しかしながらその政敵たちが百条委員会という権威を政争の具として利用しているのであれば、民主主義にとって憂うべきことだと思います。
今後も百条委員会による調査は続くようですから、特にネットを飛び交っている「アンケート」の立ち位置の再認識と、これを不適切に利用したかもしれない百条委員会の振る舞いの妥当性を改めて考えるべきだと考えて記事を書きました。
1、アンケートの性質
いわゆる「県職員アンケート」は兵庫県の文書問題調査特別委員会(いわゆる百条委員会)で集められたものです。
あたかもこのアンケートが斎藤知事のパワハラ等の問題行動の証拠であるかのような情報発信がいたるところで行われていますが、このアンケートはあくまでも調査の参考情報に過ぎず、匿名情報も多いので、それ自体を証拠として用いるべきではないということは、アンケート調査実施要領にも記載されています。
URLさえあれば誰でも回答可能であったり、繰り返し似た回答を投稿することでもっともらしい情報を捏造することが可能なGoogleフォームを使っていることも、本来はこのアンケート回答自体を特に重要視していないためだと思われます。
このアンケートには色々と問題があって、例えば「パワハラ」という言葉の定義を提示せずにアンケートを集めたため「斎藤案で庁舎建て替えを進めていることがパワハラ」「ミスをして叱責されたのでパワハラ」といった、『俺が不快だった』みたいな回答が乱舞することになったのは百条委員会の落ち度であると言えるでしょう。
ちなみにパワハラの3要件は以下に記載されています。ご参考まで。
また、公開されたアンケートまとめは回答がまったく整理されておらず、「A:目撃・経験等により実際に知っている」の回答の中には「パワハラはありませんでした」という間違えてAの選択肢を選んだっぽいもの、「パワハラではないですが」から始まる謎の体験談、「斎藤知事の話じゃねえが、俺は別のあいつが気に食わねえ」等々のお前ら大丈夫か?ちゃんと文章読んで回答してるか?という記述が多数含まれている点も残念です。
中間とりまとめ時点の集計ですが、記事にしていますのでご覧ください。
あらゆることがあまりにも稚拙ですが、まあ、あくまでもアンケートが「調査の参考」に過ぎないのであればそれもいいでしょう。
2、百条委員会がアンケートを公開した意図は政敵の斎藤知事を追い落とすため?
さて、「調査の参考」でしかないはずのアンケートについて、8/23に中間とりまとめが大々的に公開されました。
これを機に報道やSNSによる情報発信が過熱化し、「斎藤知事の問題行動はやっぱり真実だったんだ」という空気になったことは皆さん記憶に新しいと思います。
続いて10/11には全件調査の結果が追加公開されました。当初の中間とりまとめ公開時ほどではないにしても、やはり報道やSNSによる情報発信盛んに行われました。
公開するのであれば誤解を生じないように、選択肢を誤っている回答を適切な選択肢に移す、主旨にそぐわない回答を省く等のフィルタリング・スクリーニングを行う必要があったと思いますが、そういった配慮は一切なされていません。
それにそもそも、調査の参考情報に過ぎない、不確かな記述も多数含まれうるアンケート結果だけを公開する意味はありません。調査結果は当然公開べきとは思いますけどね。
ではなぜ、アンケートは中間とりまとめの段階で、何の配慮もなされないまま、取り急ぎ公開されたのでしょうか?
もちろん真実はわかりませんが、8/23のアンケート公開は「9/19の斎藤知事の不信任決議を可決するための世論形成が目的だったのではないか?」という視点を持つべきだと私は思います。
10/11の全件調査の結果発表も、同じく11月の兵庫県知事選に向けた世論操作を企図していた可能性があります。
アンケートは真偽定かでない記述の入り乱れる調査の参考情報に過ぎませんが、マスコミやSNSの野次馬たちにとっては「面白い」情報の宝庫であることに疑いはありません。
権威ある百条委員会の名で公開すればどういう反応を呼び起こすかは自明ですから、「斎藤バッシングがしたかった」以外の目的があるなら是非とも伺いたいものです。
また、例えば百条委員会構成員の一人の丸尾まき県議はアンケートが「パワハラ等の証拠」であるかのようにツイッターで広く拡散する等の問題行動が見られました。
百条委員会の構成員であれば、「アンケートを基に斎藤知事の問題行動を認定するような報道は誤りだ」と火消しに走っていただきたいのですが、かえってそれを煽っていることも、アンケートを公開する目的が「斎藤バッシングの手段だった」ことの傍証の一つだと言えるかもしれません。
3、まとめ
アンケートが真に「調査の参考情報」に過ぎないのであれば、その扱い方が多少稚拙であっても許されるかもしれませんが、それを公開するのであれば話は別です。
実際は真偽定かでない記述が入り乱れる怪文書じみたアンケートを「なんだか公正で偉そうで間違ったことはしなさそうな名前」の百条委員会の名で、情報を整理せずにマスコミやSNSに「餌」として差し出し、斎藤知事の悪評を広めたことは、『委員たちによる公的機関を利用した私的制裁』とも捉えることができるかもしれません。
百条委員会の公正性は大いに疑問視するべきだと思います。
百条委員会による調査は続くようですが、上記を踏まえると、公正な調査は期待できないかもしれません。
今後も色々と斎藤知事の悪評は出てくるとは思いますが、それが正しい評価かどうかは確りとチェックすべきだと思います。
一方で、重要なのは百条委員会が不公正だからといって斎藤知事が正しいというわけでもないことです。
本件は場外乱闘が派手すぎるせいで「実際のとこどうなんだ」というのが全然伝わってきませんから、是々非々で情報に向かい合うことを心掛けたいものです。
それと余計なことですが、百条委員会のアンケートという「餌」に飛びついた色々な方々が、クソもミソも一緒にして、斎藤知事の悪評を肥大化させたわけですが、それによって斎藤知事の実像が見えにくくなってしまったことは間違いありません。
有権者たちの目から斎藤知事の「信ぴょう性の高い問題行動」「信ぴょう性の低い問題行動」の判別がつかなくなった結果、斎藤知事のあらゆる問題行動の存在が不明瞭になり、適切な批判が行われず、成果だけが評価されて再選の一因になったのであれば、実に皮肉なことです。
令和のイソップ童話か仏教系の説話として後世に語り継ぎたいですね。
以上