東京都・Colabo訴訟の経緯まとめと今後の注目ポイント
2024年2月22日
先日の大手メディアによる印象操作が疑われる「書類送検報道」により久々にColaboがトレンド入りしたこともあり、Colaboの擁護・批判とも盛んに行われている様子です。
多分その影響もあって、特に注目度が大きい令和3年度若年被害女性等支援事業についての訴訟について、1月にあった進展も含めた注目点や経過等をまとめて欲しいとの依頼がありましたので対応します。
特に事業費の認識について変化があった様子なので、これを主軸にしたいと思います。
1、前置き
① 経緯
東京都のR3年度若年被害女性等支援事業に不当な点があるということで、暇空さんは住民監査を請求しました。
その結果、「一部に不当な点が認められるため監査対象局の福祉保健局は再調査を行うように」との指示が2022年12月に出されました。
2023年2月には福祉保健局の再調査の結果が出て、「不適当な点はあったものの、返金等の措置は必要ない」と結論付けられました。
住民監査の結果に納得ができない場合、住民訴訟を起こすことが可能になるので、暇空さんは訴訟を提起したというのがこれまでの経緯です。
②委託事業のルールについて
都への報告は委託事業として行った部分についてのみ行う。
都の委託事業と自主事業の範囲は区別する。
都の委託事業と自主事業の会計も区別する。
これらは委託事業を行う上で当然の決まり事であり、Colaboとしてもこれらを確り果たしているという立場です。
2、事業費を示す資料の時系列
① 「表1」(2022年春季)
「表1」はColaboが当初東京都に提出した事業費の実績額です。2021年4月から2022年3月末までのR3年度事業の報告書という位置づけです。
これはColaboによると「摺り切り」報告。つまり実際には超過している費用もあるものの、それは自己負担するものなので事業費として報告していないとのことでした。つまり実態の事業費を表したものではないということです。
これも本来は不適切な報告方式なのですが、本筋の問題でもありませんから言及しません。
②「表3」(2022年12月)
これは監査がColaboが整備している当該事業の「収支に関する帳簿、領収書その他の諸記録を調査し」て、「本事業の実施に必要な経費として法人A(Colaboのこと)が台帳に記録した経費」をそのまま転記したものだそうです。
そこに監査が独自の見解を示して何らかの数値を出し入れしたことはないようです。後で言及します。重要です。
③「再調査後」(2023年2月)
これは福祉保健局が監査の指示で再調査を行った際、不適切な費用を除いて事業費を再算出した費用です。
「支出の根拠となる領収書や賃金台帳を確認するとともに、これらの支出を管理している台帳と突合しているか」等の調査で算出したとのこと。
ここでも台帳が出てきますね。
④「実際」(2023年6月)
これはColaboが裁判で「実際」の事業費として提出した事業費です。
「表3」や「再調査後」と整合性がなく、非常に驚きました。
(「実際」以外は千円未満切り捨ての表である点にご留意ください)
「実際」の人件費が「表3」や「再調査後」と違っているのは「本来は委託事業費だけども、委託事業の帳簿に記載していなかったから」だそうです。
帳簿に載っていない支出は事業費として適格かどうかの検討対象外でしょうから「認められた」と言い切っていいのかは疑問です。
しかし人件費以外に相違があることは説明がつきません。「表3」はColabo自身が作った台帳から作られているはずなので、費目ごとに大きな差異が出ることは本来あり得ないように思えるのですが、、、
ちなみに「11.各種保険」のほとんどを占める福利厚生費の不一致については以前記事にしています。
④第2準備書面(2024年1月)
第2準備書面が出てきたことで何となくその意図が想像できるようになりました。
Colaboは委託事業費について、「訪問による東京都の調査を受けて個別に必要な説明をしてきたのみ」、「「総額」を Colaboが自ら導き出したわけではない。」、「Colaboの立場としては、第1準備書面でも主張したとおり、本件事業に必要な金額として、はるかに多額の金額を支出してきた(多分「実際」の通りに)と考えて」いる等と改めて表明しています。
「実際」の認識は従来どおりですが、『「表3」は東京都が勝手に作ったものだ』とも読めそうなコメントが追記されたのが新しい材料です。
3、以上を踏まえた今後の個人的な見解
以下は「こういった可能性もあるのでは?」という私の個人的な見解であり、一般的な意見論評です。
① Colaboの狙い
Colaboがまるで「表3」や「再調査後」の数値を否定するかのような認識を示したのは一体何が目的なのでしょうか?
Colaboが何としても避けたいのは事業費が26百万円を割り込み、返金命令を受けることです。そして現在認められている「再調査後」の事業費は27百万円しかありません。
監査でも問題視され、再調査で一応は「一部を除いて問題なし」と結論付けられた高額なレストラン食事代、都外遠隔地での宿泊代、私が上記記事で指摘した法定福利費の配分等が仮に裁判で否定された場合、26百万円を割り込むおそれがあります。
しかし「管理台帳に記載がない」という当然の理由で却下された人件費14百万円を事業費に含めることができれば、よほどのことがない限り最悪の事態は免れます。
この意見表明は、東京都に対して事業費の再認識を迫るためではないかと想像する余地はありそうです。
② 東京都の立場
Colaboへの返金命令を避けることが東京都の最重要課題です。
返金という結論に至ってしまうと、東京都は「事業の管理をきちんと行えていなかった」、Colaboは「公金を不当に得ていた」と認定されることと同義なので、この点で東京都とColaboの利害は一致します。
そのため、返金を避けるために監査・再調査で打ち出した事業費総額の認識を変更する可能性はゼロではありません。
ただし東京都としても監査の「表3」を経た「再調査後」の数値は確定したことであり、これを覆されることは容易に許容できないと思われ、なかなか難しい問題に思えます。
③ 東京都の弱み
東京都が行った監査や再調査はいずれもColabo事務所での収支帳簿や領収書等の閲覧に留まっている様子です。
この書きぶりだと帳簿の写しすら取得していないかもしれません。
つまり東京都が独力で会計の妥当性を主張立証をするのは不可能で、colabo頼みの状況に陥っているのかもしれません。
④ 現状
現在、colaboは「まず東京都が主張立証を試みるように」と表明しています。これは東京都にとってもその方が良いでしょう。
監査を経た再調査で「概ね問題なし」との結論を出した東京都が「自分では主張立証できないのでcolaboからヨロシク」という具合ではお話しにならないので、主張立証の主体はあくまでも東京都であるのが自然です。
とはいえ、十分な資料がないのであればどうしようもありません。
東京都は契約に基づいてColaboに対して資料原本の提出命令を出すことも不可能ではないとは思いますが、そうなるとおそらく揉めて収拾がつかなくなるでしょう。
現実的には東京都はColaboの協力を仰ぎながら「独力という体裁」で主張立証を行うのではないでしょうか。
そしてその場合、Colaboは仮に否認されかねない「都合の悪い経費」がある場合はその関連資料の提出を拒む可能性もあります。
(あくまで仮の話で、否認されかねない「都合の悪い経費」が存在していると疑っているわけでも示唆しているわけでもありません。)『別に問題があるわけではないが、一部の経費は若年被害女性の個人情報の兼ね合い(※)で証憑を出せない。これは事業費と見なしてもらわなくても構わない。でも「実際」の通りなら事業費は26百万円を超えていますから問題ないですよね?』という方向性で進めるつもりかもしれません。
※委託事業なので本来の個人情報管理者は東京都であり、Colaboは個人情報を預かっている立場です。この言い分は本来だとちょっとおかしいと思うのですが、Colaboは従来よりこの立場を堅持しています。
4、まとめ
① 今後のシナリオ
ごく普通に考えると、東京都がColaboの協力を水面下で得つつ「再調査後」の見方を維持したまま事業の適正性の主張立証を行う流れになりそうです。
ただし「再調査後」で算出された事業費27百万円には、私が上述の記事で触れた法定福利費を筆頭に、厳密に仕様書・契約書に照らすと事業費と見なして良いものか迷うような費目も一部には見受けられます。
以下、一例。
先述の通り一部経費が否定されただけで返金すべき資金が出てきてしまうので、これはColabo・東京都共に不安が大きい進め方なのではないかと予想します。
② 今後のシナリオ Ⅱ
人件費を事業費に組み込んで経費総額を再構成した上で、改めて東京都が主張立証を行うことがあるかもしれません。
ただしその場合は東京都が自ら「委託事業の帳簿に記載されていない」として除外した人件費を経費に組み入れることになるので、監査・再調査の正当性が薄れる危険があります。
ただし、現状の事業費が否認される恐れがあるのであれば、最悪の事態である返金を避けるため、こちらの路線を選択する可能性もゼロではなさそうです。
③ まとめ
「3」「4」の論評はあくまでも私の想像に過ぎませんが、少なくともColaboが何らかの意図をもって「表3」や「再調査後」と異なる事業費を示す「実際」や「第2準備書面」を出したのは間違いないでしょう。
東京都にとって監査・再調査の結果は容易には動かせませんが、「再調査後」の事業経費27百万円を基準に返金ラインの26百万円を守るのは難しそうな気もします。
しかしだからと言って、監査・再調査で切った人件費を事業費に含めるとなると、監査・再調査の正当性が疑問視されることにも繋がりかねず、他の3団体の裁判にも影響しかねません。
非常に難しい立場に立たされている東京都はどうするのか、今後に注目したいと思います。
以上
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