覚せい剤事件の舞台となったLGBT支援施設への金沢市の補助金不正支出疑惑について
2024年7月15日
7/17 金沢市から募集要項の変遷について回答があったので追記
さて、公費とクラウドファンディングで整備されたLGBT支援施設の責任者が当該施設内で覚せい剤を使用する等して逮捕されたというショッキングな事件の記事の続きです。以下、前回記事。
事件の概要。
実は私はこの報道を見た際、この施設の整備に使われた金沢市の令和4年度の補助金の支出の適法性に疑問を持ちました。
使われたのは金沢市の金沢AIビレッジ形成促進事業補助金です。詳細は以下。
ただし確証もなかったので、そのことに触れるのは公開することを予め通知した上で金沢市に問い合わせをして、その回答が返ってきてからと思っていたのですが、想定通りの返事をいただけたので記事にした次第です。
なお、本記事は補助金に関わる不正の疑いを記す記事ですが、不正の主体は金沢市である可能性が高く、受益者であるLGBT支援団体やその関連会社ではなさそうであるということについては重々ご留意ください。
誹謗中傷はやめましょう。
1、質問の回答から見えてきたこと
① 前回記事の補完
本件補助金は「映像・コンテンツ、デザイン、ICTの分野を主たる業務とする事業者」が補助対象者ですから、そういった意味でもこのLGBT支援団体は対象外だと思われます。
しかし、実は本件補助金支出の問題はそれに留まりません。
それは上掲画像の赤線部分。
要は元々金沢市で事業を営んでいた事業者は補助対象にならないことが明記されています。
このLGBT支援団体は令和3年1月から金沢市で事業を営んでいますので、本来は対象外なのは言うまでもありません。以下参考。
次項で詳しく述べますが、このLGBT支援団体は当該補助金の交付要件を満たさないため、同じ代表者の別会社を使うことにしたようです。
② 補助金の支出先はどこか
LGBT支援団体の代表者が営む、東京にある別の株式会社が補助金の交付対象者であることが金沢市から明かされました。
HP等が見当たらないので具体的に何をやっている会社かはわかりませんが、登記簿謄本を見た限りでは事業目的に広告の企画制作なんかが含まれていますので、当該補助金の交付対象者となる条件の「映像・コンテンツ、デザイン、ICTの分野を主たる業務とする事業者」は満たすのかもしれません。
前回記事で紹介したこの謎スキームも納得ですね。
要は補助金の受領者も含め、プロジェクトの主体はLGBT団体ではなくこの別会社だったわけです。
クラファンで集めた資金をこの会社が受け取ることも、自然なことでしたね。
③ 補助金利用の主体を誰と見るか
本件補助金の主旨は市内に事業者を新たに誘致してクリエイター人材の集積等を図り、産業や雇用を創出することにあります。
周知の通り金沢市の補助金で実際に整備された施設の運営主体が、従来から金沢市内で事業を営むLGBT支援団体であることや、利用目的がLGBT当事者やその支援者の交流であることは、沢山の報道が示しています。
当該LGBT支援団体自身も、自身が主体という体裁で寄付を募っています。
補助金の要項、実際に交付を受けた事業者、実際の利用状況を整理するとこんな感じです。
もちろんこの東京の会社が金沢市内の当該施設で公に活動しているのであれば、交付要件を満たす可能性もあります。
しかし実際のところ、当該施設は大々的にLGBT支援団体の施設としてのみ喧伝されており、東京の会社による本来の主旨での利用を推定できる情報発信を私は見つけられませんでした。
「産業の創出」がなされているかは疑問です。
次に「雇用の創出」という観点で言えば、いわゆる労働保険への加入者は当該施設に存在しているものの、社会保険の加入者はいない様子です。
比較的短時間の勤務をしているパート・アルバイトの雇用を東京の会社名義で行っていると考えるのが自然でしょう。
当該施設はカフェも併設しているらしいので、その従業員でしょうか?
クリエイター人材の集積という本来の主旨に合致しているか、それも疑問です。
ちなみにLGBT支援団体の方では金沢市において両保険の加入者が見当たりませんでしたので、別法人で雇用創出が図られたということもなさそうです。
この状況を踏まえると、当該補助金は本来交付対象にならない、既に金沢市で活動しているLGBT支援団体のための、必ずしも産業や雇用の創出に結びつかない事業に利用されたと考えるのが自然なような気がします。
不正支出だと捉える余地があり、問題だと思います。
また結果論ながら、その支出の結果が覚せい剤事件であることも忘れてはいけません。
2、問題点・まとめ
① 問題点
前回記事で私が述べたような、業種だけの問題であれば、解釈次第でどうとでもなる部分もあります。
また仮に実質的に業種違いの団体へ補助金を支出していたのだとしても、本来の主旨である「産業・雇用の創出」が満たされるのであれば、市内経済にとってはプラスになりますから大きな問題ではないかもしれません。
しかしそれが既に市内で事業を営む事業者の市内間移転に使われたということであれば、そこから新たな産業・雇用の創出が見込まれる程度は相対的に低くなりますから、補助金の主旨に照らすとより問題は大きいと言えます。
邪推かもしれませんが付言しますと、この東京の会社が補助金・クラファンで施設を整備してLGBT支援団体にそれを有償で貸し出すような様態になっている場合、収益物件購入資金を支援したような構図になるので、万が一そうであれば問題ですね。
② 経緯
私は当初よりこの「市内進出要件」を満たしていないことが一番の問題だと考えていました。
また、当該LGBT支援団体は明らかに市内事業者なので、他の団体が補助金を受領していることについてはほぼ確信していました。
ただし上記のような問題提起を行うためには、実際に補助金の交付を受けた事業者の具体名を把握し、またその事業者の金沢市内での活動がインターネット検索等で確認できないことを調査する必要がありました。
よって、当該問題点を省いた初回記事を書き、それを金沢市に見てもらうことで警戒感を緩め、実際の交付対象者名を引き出すという作戦を採ったものです。
補助金の交付先を聞き出した後で上記問題点を指摘し、「それは新規進出要件を潜脱する工作じゃないのか?」
「令和4年度の応募要項に新規進出要件はなかったのか?」と質問をしたところ、明快な回答を避けられて現在にいたります。何度か普通に回答していただいているのに急にそっけない対応になったのは不思議ですね。ちなみにこの部分のやり取りはこんな感じ。
何故か答えていただけないR4年度の「新規進出要件」については、補助金設立の経緯や下記のような資料からも読み取れますので、まあ変更なしと考えるのが自然でしょう。
また、ちなみに金沢市の予算では当該補助金は「新産業創出費」という枠に該当していますのでその主旨は明らかです。
7/17追記。新規進出要件に変更なしとのこと。
③ その他質問と回答
覚せい剤問題を受けて、市として例えば施設に反社組織の人物等が出入りしていなかったか、施設利用者が覚せい剤等の利用や購入を勧誘されたことはなかったのか等を警察に照会する、または同団体の出納に不審な法人・個人への支出がないか等、調査はしたのか?
国は同団体が間接的に受領した補助金を返還させる意向だが、貴市はどうするのか?
(※リンク先の動画説明。質問16分36秒から。回答17分50秒から)
ついでに上記2点の質問もしました。
1点目。「事業者としては全く関知していなかったと聞いている」(調査等はしていない?)との回答。
2点目。今のところ返還は検討していない。
以上の回答でした。
今回記事のテーマとは別の話ですが、上記回答を見た限り、金沢市は随分と薬物犯罪に甘いなあという印象を受けて心配になりました。
せめて警察への照会と追加の独自調査くらいしてから補助金返還の要否を決めましょうよ。
④まとめ
アファーマティブアクションとしてLGBTの方を支援するのに公費を使うこと自体が不適切とは思いませんが、補助金や予算の主旨・ルールに照らして適正な支出であることが条件なのは当然です。
金沢市は公金に対する規範意識が欠けていると非難される余地があります。
違法薬物の使用自体も咎められてしかるべきですが、公金で整備された施設内で使用することがさらなる批判を呼ぶのは当然です。
覚せい剤を施設内で使用して逮捕された団体の責任者は、当該施設が補助金で整備された旨は重々承知していたわけです。
金沢市の公金支出に対する意識の緩さと、逮捕された人物との行動にまったく関連がないとは言い切れません。
もちろん当該LGBT支援団体及びその関連会社自体は覚せい剤使用との関わりがなかったのだとは思いますし、補助金についても別に嘘をついて受領したとは思いません。
要項の潜脱と捉えかねられないスキームを許容したことは金沢市に非があります。
しかし上述のような適切とは言い切れないスキームに基づいて公金を支出することは、LGBTの方々やLGBT支援活動自体への批判を招きかねないとも言い切れず、その意味でも金沢市は襟を正す必要があるでしょう。
補助金の支出時期的に住民監査請求等を行う猶予はありますので、金沢市民の方はチャレンジしてみてもいいかもしれません。
以上