Colaboの都委託事業の監査結果に関する今後の注目ポイント
12月29日
(1月4日更新)
Colaboの都委託事業に関する住民監査請求の結果が出た。
2023年2月28日までに都の所管部署が当該事業の再調査を行い、客観的に検証ができるよう本来の事業経費を特定した上で、不適正な部分については返還請求等を行うようにとの指示が出されたようだ。
この結果の全文を踏まえた上で、今後どのようなポイントに着目したいかを個人的に記す。
Ⅰ 都への報告の適正性
Ⅱ 経費の事業区分の適正性
Ⅲ 不適切な経費の総額と悪意の有無
Ⅳ HP上の会計報告の正確性
3点が都の再調査においてどのように評価されるか、最後の1点が支援者からどう評価されるかが重要だと思う。
都への報告方法(大前提)
都への報告は委託事業として行った部分についてのみ行う。
都の委託事業と自主事業の範囲は区別する。
都の委託事業と自主事業の会計も区別する。
事業単体の成果と当該成果を出すための総事業費を把握しなければ、東京都は委託の妥当性の評価、今後の予算額、政策等を検討できないのだから、これは極めて真っ当なことである。
これは言わずもがなのことではあり、Colabo側も明言している。
1、都への報告の適正性
住民監査請求結果報告のP.21(ページ番号はPDFファイルのページ番号ではなく資料のページ番号で表記している)にあるように、暇空茜氏が主張する、『都の委託事業の成果報告が記された「実施状況報告書」に信ぴょう性がない』との主張は特に確たる理由もなく退けられている。
実際は、都へ適正に事業の成果を報告していない可能性は高いので、この点が都の調査でどのように扱われるかが一つのポイントとなる。
一例として弁護士の対応件数を挙げる。
Colaboが対応した総件数は549件であり、配偶者暴力(略)事業での対応件数が247件であるのだから、若年(略)事業での対応件数が302件を超えることは本来あり得ない。
(実際は自主事業対応分もあるのでもっと減るはず)しかしColaboは弁護士対応件数に関して、若年(略)事業の報告書には当該事業の対応件数ではなく、法人としての対応総件数の549件を記載したことを自身で主張しているため、『都の委託事業と自主事業の範囲を適切に区別する必要が生じた』が、それを果たしていないことになる。
弁護士対応件数以外にも、関係機関との連携件数は他の項目も活動報告書に記載されてる総対応件数と若年(略)事業単体の成果は概ね一致している。
もう一方の配偶者暴力(略)事業や自主事業の成果を、本件若年(略)事業の成果に加えるという水増しがなされている可能性が高い。(※)
事業の成果を測る主要な数値を過大に報告しているということであり、問題である。
(※仮に水増しされていないのであれば事業別の対応件数は以下の通りになるため、莫大な経費を費やしているColaboの自主事業は何の成果を出しているのかという別の問題になる。)
上記の成果の報告に加えて、Colaboは総事業費の報告も行っていないようだが、実際にこれは東京都も問題視してこなかった様子。
繰り返しになるが、事業単体の成果と当該成果を出すための総事業費を把握しなければ、東京都は委託の妥当性の評価、今後の予算額、政策等を検討できない。
『本件契約に係る本事業の実施に必要な経費の実績額を再調査 及び特定し、客観的に検証可能なものとすること。』という指示については、おそらく経費の総額を打ち出すという意味もあると思うので、2月28日迄の東京都の再調査の結果を待ちたい。
2、経費の事業区分の適正性
住民監査請求結果のP.18~23に記載されているように、暇空茜氏の経費額に関する疑義は人件費、給食費、宿泊費について以外は退けられている。
これは単に「帳面上で相当額の支出を確認できたか」が判断基準であり、経費が委託事業に使われていたかどうかは検証されていない。
一方で、極めて経費の適正性が疑わしい費目もあるので、この点を都がどの程度深掘りして調査を行うかが一つのポイントとなる。
一例としてガソリン代を挙げる。
以下の暇空茜氏の計算が多少ブレていたとしても、「車両を委託事業以外にも使っていた」「別の車両のガソリン代を委託事業のガソリン代に付け替えた」という疑いは発生する。
都が本気で調査するのであれば、領収書の給油日時やスタンドの位置等からある程度の結論は出るはずである。
ガソリン代は一例で挙げただけで、それ自体の重要性はそれほど高くはないが、どの費目にしても委託事業と自主事業の経費を正確に区切るのは難しい。
ましてやColaboは元々あった自主事業に委託事業が後から相乗りするような構図になっているため、経費切り分けは特に困難であることが推測される。
一般的には事業設計段階で費用の配賦基準を定めることが多い。例えばガソリン代であれば上記の暇空茜氏が行ったような計算に基づいて算出する方法や、人件費であれば自主事業と委託事業の従事時間に応じて按分する方法等がある。
都は『客観的に検証可能』な経費を特定するよう求められているので、東京都は後追いで上記のような配賦基準を定めてColaboが委託事業に使った経費を評価するはずである。2月28日迄に行われる再調査の結果を待ちたい。
3、不適切な経費の総額と悪意の有無
上記のような区分の問題ではなく、そもそも経費として申告すること自体が不適切な費用が混じっていた可能性が監査結果で指摘されている。
上記の通り色分けが難しい経費区分の問題は、そもそもの事業設計が良くないため、返金さえすればそう大きな問題にはならないはずである。
(その額があまりにも大きい場合は別だが)一方で「計上することに妥当性が疑われる」指摘されているような不適切な経費については金額や悪質性によってその評価は大きく変わる。
もしも東京都の調査で不適切な経費が認定され、そこに明らかに委託事業外の経費が混じっていた場合は、刑事事件に発展するおそれもある。
東京都にとって自らの管理の甘さを認めることになるので、この点を強く追及できない可能性も少なからずあるが、反面悪質な偽装等が伴っていた場合はその限りではないとも思う。
いずれにしても2月28日迄に行われる東京都の再調査の結果を待ちたい。
4、HP上の会計報告の正確性
Colaboの自主事業経費の源泉は民間団体からの助成や個人・法人からの寄付金等であり、他者からの支援によって成り立っている団体である。
支援者を含めたステークスホルダーに対して、年間を通した成果を報告するのがHPで公開している活動報告書である。
その中には会計報告も含まれている。
暇空茜氏の経費に対する疑義の多くがほとんど検証されずに退けられたのは既に述べたが、その中には「会計報告記載の費用(委託事業+自主事業経費の総額)よりも過大な費用が経費として請求されている」という指摘も含まれる。
こういった指摘も「帳面上で支出が確認できた(※)」ということになっているわけだが、それはつまり公開されている会計報告記載の数値(法定福利費の場合は3,353千円)は、真正な数値ではないということになる。
(※ちなみに、法定福利費の計上自体は事業按分がなされておらず、不適切であったとの指摘がなされている)当該事象は複数の費目で散見されており、会計報告に記載された数値が正確ではないことは、ほぼ間違いがないように思う。
つまり、実は「若年被害女性等へ回る経費が実際は少額で、役員への給与が非常に多額であった」ことも可能性としてはあり得るわけであり、その場合は当然ながら「そんなことなら寄付をするのではなかった」と考える方もいるだろう。
この点についてはColaboは何らかの説明を行うと共に、正確な会計報告をリリースする必要があると思う。
まとめ
誇張でもなんでもなく暇空茜氏の監査請求が通ったことは歴史的なことであり、今後の経緯を注視したい。
またColaboにとってここが正念場である。
本件は東京都とColabo双方に責任があることであり、またその責任の軽重を決める匙加減は東京都に委ねられている。
私にはどちらの責任が重いのかは見当がつかないが、はっきりしているのは、これに関しては善悪よりもむしろ立ち回りが重要になるということである。
今もなお無謬性を主張し続けるColaboが正しい(あるいはその責任が軽い)のだとしても、『全て東京都の指示通りやったので自分たちは悪くない』と東京都に責任を押し付けるような言説は控え、上手な「喧嘩」をすることが肝要であろうと思う。
おまけ
履歴
2022年12月29日 本稿公開
2023年1月4日 住民監査請求結果が出たので、リンクを暇空さんのTweetやNoteから都のHPのPDFに貼り変えると共に、言い回しを若干調整。