大石あきこ議員の政治団体「支部」の人件費支出漏れを軽視したられいわの支持率が下がらないか心配という話
2024年10月12日
(10/15支部の政党交付金収支のことを追加)
盛り上がりを見せている大石あきこ衆議院議員の政治資金収支報告書の収入の内の一部が不記載になっていた問題。
政治団体「大石あきことあゆむ会」の令和4年度の政治資金収支報告書の収入を、R5/8(当初提出日はR5/5)になってから450万円の収入を追加記載したことが指摘されています。
参考
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/33735/04ak0753.pdf
ご本人はこのように弁明?しています。
多額の収入が抜けていたことについては、金額ではなく「何でそんなことになったの?」という部分が重要なのですが、そこには言及されていないご様子。翌期の繰越金が合わないから気づきますよね、普通。
その他にも問題点はありますが、色々な方が言及しているので本稿では触れません。
そして大石氏が代表を務めるもう一つの政治団体「れいわ新選組衆議院大阪府第5区総支部」の、令和4年度の政治資金収支報告書の人件費をR5/12/26(当初提出日はR5/5)になってから5百万円から13百万円に修正されたことについても同じく話題になっています。
参考
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/33740/04p40001.pdf
端的に言うと、この人件費支出は架空のものであり、当該8百万円は支出したフリをして誰かのポケットに入ったんじゃないの?という疑いを抱いている方が多いです。
いわゆる「文通費」の使途発表の前日に当該支出を改めて上乗せしてる点も疑いを濃くしているようです。
この件について、私なりに興味を持って調べてみました。
結論、不正はなかったという前提で考えると「訳の分からないレベルで会計が杜撰だった」ということになりそうです。
1、前置き
① 理解ができる修正の事例
人件費の話をする前に「こういう不備修正なら、まあ起きても仕方ないよね」という内容の修正を挙げます。
これは人件費のついでに修正されている備品消耗品費26千円の追加計上です。
色々と背景は想像できますが、一番分かりやすいのは「個人で立て替えていた領収書が後から出てきたから経費にしよう」というようなストーリーでしょうか。
政治団体にはもちろん確り経理をしていただきたいですが、一方でこういうことが起こり得るということは理解できます。
② 問題となっている人件費の原資
人件費の原資ははっきりしています。
「文通費」の8,224千円を「第5区総支部の私設秘書人件費の一部」に使用したと明記されています。
「文通費」は議員個人が受領するものであり、政治団体である「支部」に属する私設秘書の人件費は政党支部から支出しないといけません。
そのため大石氏は当該人件費相当の「文通費」をいったん「支部」に入れています。
ちなみに、R5/5のR4年度政治資金収支報告書提出時点では「支部」への文通費相当額の寄附収入のみが記載されており、肝心の人件費の支出は記載されていません。
支出が記載されるのは冒頭に掲示している画像のように、「文通費」使途公表が行われたR5/12/27の前日の12/26になってからです。
この辺りの時系列も「文通費が手つかずだと格好がつかないから『支出したこと』にしたんじゃないの?」と疑われる要因であろうと思います。
③ 大石氏・政党による釈明
大石氏は本件人件費の計上漏れについては以下のスライドで釈明しています。
「別の報告書(政党交付金だけを対象にした使途等報告書)では支出計上しない人件費ぶんがあり、その作業と混同」したことがミスの発生原因とのこと。
多分これですね。この帳簿には記載漏れの対象であった人件費8百万円が含まれていないので、この帳簿と支部全体の帳簿の支出が混同されたということでしょうか?
支部の収支から、そこに内包されている政党交付金の収支を抜き出しているはずなので、後者の作業の結果、前者の数字が狂うという説明はどうもしっくりきませんが、、、
2、釈明の評価
もう一度書きますが、大石氏が代表を務める政治団体「支部」は人件費を5百万円から13百万円に修正しています。
2.5倍以上の修正なので、明らかに異常ではあります。そしてその説明がつきにくいということを以下に述べます。
① 釈明の率直な疑問点
「支部」「歩む会」「文通費」を合算した「事務所」という大きい枠組みでは経理をきちんと行っていたものの、それらの支出を「支部」「歩む会」「文通費」それぞれの帳簿に振り分ける際にミスがあったと釈明の内容を解釈して良さそうです。
とりあえずこの釈明を素直に受け取ってみましょう。なお、上述の「別の報告書」とやらが何かは判然としませんが、支出計上に人件費が含まれないそうなので、結論に影響しないため、考慮しません。
「事務所」という大枠の括りではこの「連結合計」の通り、きっちり?会計はしていましたが、その支出を「支部」、「歩む会」、「文通費」にそれぞれへ振り分ける過程で転記ミスがあったとのこと。
その結果、上掲画像の12/26の修正が終わるまでに以下のようなミスのある政治資金収支報告書が提出されることになったようです。
政治資金収支報告書は単式簿記なので、普通は翌期繰越金と「事務所」の現預金を照合すること等で間違いがない旨を検算すると思うのですが、そういうことすらしていなかったようで、「支部」と「歩む会」でそれぞれ1回ずつ、計2回の政治資金収支報告書の修正にいたったようです。
上記のいずれの連結時期を見ても、人件費の支出が存在する団体は「支部」以外になく、「事務所」という枠組みで見ようが、「支部」、「歩む会」、「文通費」の3つの帳簿で見ようが、人件費の帳簿は1種類しか存在しません。
そのため、人件費の支出の内、13百万円中の8百万円が抜け落ちていたことについて、「事務所として支出はきちんと管理していたが、転記の作業ミスで政治資金収支報告書に記載されていなかった」という釈明は怪しく思えてしまいます。
大枠の帳簿の総支出を複数の帳簿の支出に分割するならミスは発生してもおかしくないですが、、、
ミスだとしたら合理的な説明は難しいように感じます。
とはいえ、人間はわけのわからないミスもしますから、「ドンブリ勘定」、かつ「チェック体制が存在していない」という悪い両輪が揃っていれば、まあ起こり得るのかなあ?という感じでしょうか。
② 人件費の監査をすり抜けた謎
上記の指摘の他にも疑問があります。政治資金収支報告書は監査人による監査を受けて提出されるということです。
政治資金監査人とは、政治資金の収支報告書や会計帳簿の監査を行う専門家です。具体的には、弁護士、公認会計士、税理士などが総務省の政治資金適正化委員会に登録されている必要があります。
彼らは、政治団体の支出の透明性を確保し、国民の政治不信を払拭するために活動しています。
政治資金監査は大きく分けると以下3つの点についてチェックを行うことになっています。
1 会計帳簿と収支報告書の整合性
2 領収書や明細書等の確認
3 収入・支出の記載漏れの有無
ちなみに本件報告書の監査は伊堂寺さんという大阪の税理士さんが行ったようです。
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/33740/04p40001.pdf#page=45
人件費については『会計帳簿と領収書等との突合により、又は会計帳簿と振込明細書及び振込明細書に係る支出目的書との突合』によりチェックされるということが上記マニュアルに記載されています。
人件費は通常は振込で、そして継続的に支払われます。上述の備品消耗品費のように「現金で立て替えてたからうっかり帳簿に記載し忘れちゃった☆」ということが基本的には起こり得ません。
もちろん現金で日払いパートへの賃金を払うということもなくはないでしょうが、少なくとも修正後人件費の13百万円中の8百万円は私設秘書の人件費だということははっきりしています。
人件費の大部分は毎月支払われている給与と考えるのが自然でしょう。
ちなみに帳簿はこんな感じでつけます。
監査人による監査はあくまでも形式チェックに過ぎませんが、帳簿と証憑が合致するかは確認されます。
仮に大石氏の釈明通り、帳簿に記載漏れがあって人件費支出が一旦は5百万円と記載されていたにしても、実際には13百万円を支払ったという証憑が「支部」に存在しているはずなので、証憑と帳簿を突合させると不一致になります。
監査で引っかからないとは思えないのですが、、、
ついでに言うと、「支部」はR4/1から社会保険加入事業所です。
社会保険料は事業主負担分がありますから、その納付に関しても監査人によるチェックが行われていた可能性はあります。
つまり「人件費支出の過半が帳簿から抜け落ちた上に、監査人に人件費支出の証憑が一部しか提出されなかった」ということが仮に起こりえたとしても、その場合は社会保険料の納付額は全従業員分、賃金の支払い額は半額以下ということになるので、バランスが不自然になります。
(例えば給与5百万円に対して社会保険料2百万円みたいな感じで社会保険料の比率が高くなるはず)監査人がそれに気が付かないとは思えません。
不審に思った監査人が賃金台帳を確認することで記載漏れは容易に発見できます。
住民税や源泉徴収税等にも同じことが言えます。
この社会保険料等の部分は厳密には監査人による監査業務外の話ですが、普通は「おかしくない?」くらいの声はかけてもらえるような気はします。
3、まとめ
以上の通り、もちろん決めつけてはいけませんが、この人件費支出の記載漏れが「ミスによって起こった」というのが疑わしい目で見られる、換言すると支出の実在を疑われるのはやむを得ないでしょう。
大石氏が「議員の会計のご意見番」として高い評価を受け、マスコミに重用されていることを踏まえると、なおさらです。
以下、一例。
本件がミスだとしたら、よほど杜撰にカネを扱っていなければ起こり得ないミスだと思いますので、他党のカネに絡む問題を追求することについて、「自分のことを棚上げにして何を言ってるんだ」という批判を大石氏は甘受するべきです。
そして、詫びるべきはミスの発生ではなく、会計を軽視していたという姿勢の部分だと思います。
単式簿記を理由にミスが発生したとしていますが、単式簿記が複式簿記に劣るのは「収支『しか』わからず、間違えている箇所を特定しにくい点」です。単式だろうが複式だろうが、収支は容易にわかります。
世間ではこども会のバザー等でも「収入から支出を差っ引いて残った帳簿上のお金と実際の有高を照合してご明算」という締め方をします。
収支すら合わせずに放置していたのはただの会計業務の放棄です。「収支残高を合わせることがなかった」というのが『言い訳』として成立すると考えていること自体が有権者をバカにしていると感じる方もいるでしょう。
「政治家の会計に一家言あり」という立場でマスコミの寵児となっていた大石氏のクレバーなイメージと、帳簿の収支すら合わせていないという実像があまりにもかけ離れているため、ミスではなく不正を疑う方がいるのも無理はありません。
もう少し詳細な説明や証拠の提出をしなくては、疑いは晴れないのではないでしょうか?
私はれいわ新選組を支持する立場ではまったくありませんが、この問題の本質を見誤ると、さらに支持者が減ることにつながらないか心配しています。
あとついでに、マスコミは議員を呼んで政治家の会計について論じさせるのであれば、その議員が代表を務める政治団体の政治資金収支報告書くらいチェックしたらどうですかね?
以上