49 茹でカエル 50 体験と共感 51 体験と共感(続 )
◆ 49 茹でカエル
捕まえたカエルを、いきなり熱湯のなかに放りこむと、熱さにびっくりして飛び出します。
けれども、水から徐々に温めていくと、気付かずに、茹で上がってしまうという話。
動物ばかりでなく、私達人間も同じようなことになりそうです。
急激な変化に対しては、瞬間的に強い反応を見せますが、変化が体感できないくらい小さな場合、あるいは徐々におきている場合には身体が慣れてきます。
この順応性、適応性は、実はとても大切な能力です。変化に対応しながら、活きる力をつけているのです。
肉体的なことばかりでなく、精神的な場面でも、「慣れる」という対応力が活かされます。
ただ、慣れることで新鮮な気持ちが消えたり、感動が薄くなるのも事実です。注意力が散漫になります。
接客というしごとは、日々、新しいお客様との新しい出会いに溢れています。それを忘れて、「慣れ」が目立つと、歓びも半減します。
毎日を、新鮮な気持ちで迎えましょう!
◆ 50 体験と共感
アメリカのストーニーフィールド(ヨーグルトなど乳製品製造)が、「あなたの電車通勤に敬意を表します!地球を守るためにご協力くださりありがとうございます」とラベルに印刷してサンプル配布をしたことがあります。
このブランドは、決して安売り商品ではありません。でも、このメッセージが共感を呼び、消費者の好感を得て、売上を伸ばしました。
理想・理念によって顧客と絆を結ぶ一歩とは、ブランドの使命感、主張が消費者の感情的な共感を呼ぶことから始まります。
ポッドキャスティングの項目でも触れましたが、顧客は、「安心」「信頼」を得られるブランドを求めています。商品そのものの帰属価値だけでは優位性はなく、付加価値を評価しています。
自分の体験を通して、あらゆる情報を浴びながら、自由にブランドを選びます。もはや、企業サイドの都合のよい商品PRは、独自性を持ちにくい環境になっています。商品力だけで、顧客を囲い込もうとしても難しい時代になっているのです。
では、なにが重要か?
企業の姿勢、理念です。「安心」「信頼」を企業に求めているのです。
それを現場で伝えているのが、スタッフです。スタッフの仕事する姿を見て、ブランドを評価します。
ファッションアパレルであれば、スタッフが美しく振る舞い、楽しく働いている店が選ばれるのは当然のことです。
「あのスタッフみたいになりたい!」と感情を刺激するのが、スタッフの役割!
◆ 51 体験と共感(続 )
AIKOのコンサートの冒頭、彼女が、「男子ーっ!」と叫ぶと、会場の男性が歓声で応え、「女子ーっ!」という声にキャーっと声があがるという一コマがあります。
EXILEのコンサートでは、ラストで降り注ぐ紙テープに、彼らからのメッセージが印刷されていると聞きました。
どれも観客と一瞬にして「共感」をつくっています。
視点を変えて、焼き鳥屋、鰻屋などは焼くときの匂いで客を誘います。パン屋さんも、パンを焼いているところが見える方が、売上がいい。イタリアンが急成長したのも、オープンキッチンを取り入れたことが影響しています。
すでにお客様が体験していることを思い出させることで、購買に働きかける好事例です。これも、体験を共感として活用しています。
ファッションアパレルにあてはめてみれば、「あのスタッフみたいになりたい!」というあこがれを提供することが大事な「体験」の提供といえます。どんな時代でも、スタッフの役割は大きい!
それは単にブランドの服を試着しているだけではなくて、立居振舞いや、気遣いといった素敵な女性として存在してはじめて認められるわけです。まさに、そのブランドを輝かせるのがスタッフなのです。
ファッションに背伸びをする機会が減った今、スタッフも緊張感がたりないまま、売場に立っている姿をよく見かけます。これでは、お客様が楽しめません!
「○○さん、居るかしら?」
お客様が会いに来てくれるスタッフを目指しましょう!