22 心に残っている話

◆ 22 心に残っている話
研修の中でスタッフさんが伝えてくれた話のなかでも、忘れることができないものがあります。
東北大震災の後、仙台市内にあるレディースブランドの店長が伝えてくれました。
ある日、店頭を行ったり来たりしながら、店内の様子を伺う中年の男性に気付きました。入りたくても、入れないでいる。そんな感じを受けて、歩み寄って声をかけました。最初は、びっくりしたような顔をしていた男性は、すこし落ち着くと、事情を話し始めました。
震災に合い、大切な、大切な娘が命を奪われたこと。
津波の被害には家も崩れ、ほとんどのものが流されてしまったが、娘の部屋で一枚のレシートが見つかったこと。
それが普段よく買い物をしていた店だとわかり、今日、訪ねてみたこと。娘を思いだすものがないので、どんな服を着ていたのかを知りたくなったということでした。
店長は、娘さんの名前を聞き、購買記録を頼りに、店内から娘さんが購入されていたものを集め始めました。
けれどお店も被害に合っていて、なかなか見つかりません。そこで、ためらわずに本社に連絡を入れて事情を説明し、該当する商品をできるだけたくさん集めてもらえるように依頼しました。
後日、手配できた商品を、その父親にお届けしたそうです。どれほどの喜びだったことでしょうか!何度も、何度もお礼の言葉を繰り返されたそうです。
数日後、再び男性が店を訪れ、菓子折りをくださったといいます。
「あのお菓子は、ほんとうに温かかった・・・」と言った店長の表情が、わすれられません。
いまでも、ときどき研修でお伝えしている話です。

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