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「技術」を「価値」に変えられる開発組織へ。MFBC-CTO室の挑戦|私たちの職務経歴書 ~ 渡辺 慎也

こんにちは!マネーフォワードビジネスカンパニー採用広報の久住です。

私たちの職務経歴書」シリーズでは、面接の場でみなさんとお会いする社員のこれまでの経歴、マネーフォワードになぜ入社したか、いまの仕事ややりがいなどをお伝えしています。

今回は、ビジネスカンパニーにおける開発組織全体の生産性向上に取り組む、MFBC-CTO室 室長の渡辺慎也さんにインタビューしました。

MFBC-CTO室 室長
渡辺 慎也(わたなべ しんや)
2002年に受託開発会社でエンジニアとしてのキャリアをスタート。2015年にクックパッドに入社後、広告開発に従事。2018年に子会社であるCookpadTVの取締役CTOを兼任し、広告開発と料理動画事業両方の開発全般の責任者を務める。2024年1月にマネーフォワードに入社後、MFBC-CTO室の室長として、『マネーフォワード クラウド』をはじめとしたBtoB事業領域における開発組織の生産性向上に取り組む。


これまでの経歴

――まずは渡辺さんのエンジニアとしてのバックグラウンドを教えてください。

プログラミングをはじめたのが小学生低学年の頃でした。うちにはゲーム機がない代わりにパソコンがあったので、プログラミングのコードがひたすら書かれた参考書を写経して、自前でゲームをつくっていました。

「プログラミングを仕事にしたい」と思い、新卒で受託開発の会社に入社したのがエンジニアとしてのキャリアのスタートです。オープン系(Web系)の開発の部署に配属されました。当時、技術が大好きで、いろんなことを学んでできるようになるのが楽しかったので、早く出社して開発する日々でした。

ただ、徐々に「クライアントが検収すればOK」という受託開発ビジネスに違和感を持つようになりました。きれいで保守性の高いコードを書くことはあまり評価されない環境で、技術を突き詰めたい気持ちがある同僚たちが辞めていく様子を見て残念に思っていました。社長に「うちの会社は技術力を大事にしないんですか」と詰め寄ったこともありました。もちろん「うちは技術の会社だ。そんなことはない」と言われましたが。

「エンジニアが技術力を高めたら評価につながる」ような仕組みをつくりたいと、その会社で役職者になりました。この時から今まで「技術を価値に変える」ことに興味を持ち続けています。

――ご自身で開発することが大好きでありながら、マネジメントにシフトしたとのことですが、大変なことはありませんでしたか?

最初はメンバーのメンタリングやオンボーディングなど、苦労しました。でも徐々に、開発とは違うやりがいを感じはじめたんです。成長したメンバーが「あの時、渡辺さんが言ってくれたことは、こういうことだったんですね」という気づきを教えてくれたことがありました。

自分自身が開発して成果を出すのではなく、育てることで間接的に成果につながっている達成感を感じられるようになりました。

――その後クックパッドに転職し、CTOとしてのキャリアもスタートされました。

一社目では、クライアントにシステムを納品するなかで、自分事化しきれないことが惜しい気持ちがありました。事業の中で開発できたら面白そうだと考えて、事業会社への転職を選びました。

最初のうちはマネージャーをやっていたのですが、経営について学びたいと思っていた時に「子会社を設立するのでCTOをやらないか」という声がかかったので「ぜひ」と。

2018年にCookpadTV株式会社が創立されると同時に、取締役CTOに就任しました。

――CTOとしてのご経験はいかがでしたか?

今振り返っても、自分のキャリアにおいて大きな経験だったと思います。

当時は「CTO」という役割に対する解像度がそれほど高くなかったんです。スタートアップのCTOはなんとなく「何でも屋さん」のようなイメージがあったくらいです。

そこから、自分はCTOとしてどんな価値を出すタイプかを考えました。自分の強みをどう生かすかいろいろ考えた末に、「技術的な視点で事業を加速させる」というのが、私なりのCTOの定義になりました。

というのも、事業は一日二日でできるわけではありません。事業を企画してローンチするまでには一定の時間がかかります。その過程において、開発が事業を進めるスピードのボトルネックになってはいけない。むしろ、事業計画に対してどんな技術的な先行投資ができるかを考えて、いざやると決まったときにはアクセルを踏めるようにする準備が必要です。

また、CEOが「こういう機能がほしい」と要望する際、CEO自身は開発へのインパクトを鮮明にイメージできていないケースがあります。CTOはその真意を理解することが大事。その機能が事業的になぜ、どれくらい重要なのか把握し、リリースタイムを伸ばしても開発すべきなのか。真意を理解すれば、別のやり方で早くリリースできる方法を提案することも可能です。

テクノロジーの世界では日々新しい技術が登場し、ブレイクスルーが生まれています。それを使ってどう事業を加速させられるかを考え、さまざまな視点でCEOに提案することも、CTOの役割だと考えています。

マネフォに入社したきっかけ

――その後、どういった経緯でマネーフォワードに入社されたのでしょうか?

「後進育成」についての課題感を持っていたことが、次のチャレンジに進むきっかけになりました。

当時、自分の後に続くメンバーを育てるために、成功・失敗経験をかみ砕いて教えたりしていました。自分が10年かけて経験したことを、圧縮して伝えられたら、メンバー自身がそこから学んで成長してくれるはずだと思っていたんです。

でも、実際に後進として完璧です、といえる人材は育てられていませんでした。そんな時に、当時のクックパッドのCTOから「そのやり方は渡辺さんにしかできないよ」と言われて衝撃を受けました。

考えてみれば当然ですよね。僕のやり方の背景には、受託開発でハードな開発を乗り越えた経験や、マネージャーとしてメンバーからうれしい言葉をもらった経験などがある。僕がそのすべてを同じように伝達して、再現することは不可能です。

ではどうすれば上手く育成できるのか。個人の経験と能力だけに依存しない、周囲の環境・仕組みを構築することで、再現できるのではと考えました。

例えば、経験の浅いメンバーが私と同じ10の成果を出せるようになるには時間がかかるかもしれませんが、周囲の環境・仕組みを用意することで7の成果を出せるようにできるのではと。残りの3はリスクとしてハンドリングしたり、そもそも10を求めないということです。もちろんその成功体験から気づきを得て、次の機会には自分一人でできるようになるかもしれません。

こういった環境づくりに挑戦するにあたって、自分と相手の関係性に依存しない、お互い顔も名前も覚えられないぐらいの規模の企業で試したいと思ったんです。こじれたら「飲み会で解決」みたいな手が使えない規模ということですね。

そこで、急激に人が増えて混乱していそうな企業を探していたところ、一社目の会社で一緒だった先輩からマネーフォワードへのお誘いをもらいました。私がやりたいチャレンジにぴったりだと感じて2024年1月に入社しました。

――実際にマネーフォワードに入社されてみて、どんな印象を持ちましたか?

急成長による組織の混乱がもっとあるかもしれないと想定していましたが(笑)、意外ときちんと整備されている印象でした。MVVC(Mission Vision Value Culture)の浸透もそうですし、開発環境もよく整理されていました。

でも、BtoB事業を手がけるビジネスカンパニーのCTO室として、組織の中に入り込むと見えてきた課題もありました。

――どんな課題が見えてきたのでしょうか?

ビジネスカンパニーでは20以上のプロダクトをリリースしています。これまでのフェーズでは「最速でリリースしてPMFすること」に注力していました。

しかし、現在はプロダクト間の連携強化や、複数のプロダクトをまたがるような機能追加など、『マネーフォワード クラウド』全体としてのさらなる価値提供に向かって努力しているところだと思います。CPO(Chief Product Officer)をはじめ、PdM、エンジニア、デザイナーら、プロダクト開発に関わるメンバーが一つのプロダクトにしようと戦っている段階です。

これを開発の観点で見ると、プロダクトをまたいだコミュニケーションや連携のための方針が定まっていないこと、その方針を「こうしよう」とリードする組織がないことが課題だと思いました。

マイクロサービスで言えば70~100にものぼる開発チームがある中で、横断的な活動をしようとしても、「やってください」と言うだけではうまくいかないわけです。

また、せっかく一つのチームでよい事例が生まれても、それが独自の開発方法で、他のチームに横展開できなければもったいないですよね。ビジネスカンパニー全体としての技術スタックやアーキテクチャを揃えることで、開発組織が事業貢献できる環境を整える必要があると考えました。

MFBC-CTO室について

ミッション・業務内容

――今挙がったような課題を解決することが、MFBC-CTO室の一つの役割かと思います。改めて、MFBC-CTO室のミッションと業務を教えてください。

プロダクトと開発組織を一つにすることがミッションです。ただ、一つになるというのは誰も定義できていない状態。それを模索して組織に示して、変革していくことがMFBC-CTO室がやるべきことだと考えています。

先述の通りプロダクトが一つになろうとしている段階で、開発組織もこれまでの個別最適にやってきた部分を標準化し、共通のプラットフォームをつくらなければいけません。どういう開発体験で生産性を上げていけるのか、理想的な開発ビジョンを考える必要もあります。個別の開発チームのよいところを、ビジネスカンパニー全体に広げて行けたらと思っています。

また、横断的な開発を実現するための「文化」をつくることもミッションの一つです。

――渡辺さんが入社されてから、こうしたミッションのためにどのような取り組みを行ってきましたか?

マネーフォワードの特徴として、広く横断的な活動を進める際に「誰にネゴシエーションをすればいいのか」が明確に決まっているわけではありません。

一般的な大企業のように、CTOの意思決定を得て、トップダウンで効率よく回すといった文化があるわけではないのです。そうしようとしても、みんなが動いてくれるわけではありません。でも現場に赴いて、みんなの信頼を勝ち得ていくというのも現実問題難しいですよね。

そのため、横断的な活動を推進するための基盤となる文化や仕組みを構築しなければいけないと考えました。

まず、私はマネーフォワードの現場感覚がなかったので、まずはあるプロダクト開発チームに入って、一カ月、一緒に開発をしたんです。普段現場がどういう風に活動しているのか、どんなコミュニケーションをとって、どんな課題があるのかを把握して、最後はそれについて発表もしました。現場に顔を知ってもらうためにも重要な取り組みでしたね。

また、その後は「キーパーソンにアプローチする」ことをひたすらやりました。これだけ多くの開発チームを一人で動かすことは不可能だからです。

このキーパーソンと会うときに意識したのが、単なる1on1ではなく「こういう仕事を一緒にやりたい」という業務とセットで話しに行くことです。あいさつ回りで終わらせずに、「この仕事で今後もよろしくお願いしますね」と具体的な仕事で定期的につながれることが大事なのです。

例えば、「開発の標準化を進める」という仕事もよい接点になります。「標準化するにあたって、あなたの事業領域ではどういう課題がありますか」と聞いて、そこで出た課題に対して次の機会にアイデアを持っていく、といったコミュニケーションをとることで、定期的なつながりと信頼を獲得することができるのです。

仕事を通して接点を持たないと信頼を勝ち得ることもできないと思うので、業務とセットで自分が実績を出すことは重要ですね。

――実際に取り組みによる変化を感じていますか?

これは実際に他のメンバーにも聞いてみたいですが(笑)、ある程度信頼を置いてもらったことで、「渡辺に情報を集めておいた方がいい」という情報の流れができている気がします。

組織のキーパーソンとの連携もできてきているので、MFBC-CTO室から組織へ横断的な影響を及ぼす土台の部分ができつつあると思います。

今後の展望

――これからMFBC-CTO室をどんな組織にしていきたいかをお聞かせください。

最初の方に話した通り「技術を価値に変える」ことができるMFBC-CTO室にしたいですね。高い技術力を養い、維持するための環境づくりは、一つの正解があるわけではありません。チームや会社内の技術力や状況を見ながら常に変化させる必要があります。また、採用や評価制度も関わってきます。

――渡辺さんご自身がこれからチャレンジしたいことも教えてください。

今までは自分が見える範囲で、メンバーが成長する環境・仕組みづくりに取り組んできましたが、これからはビジネスカンパニーという大きなスケールで「技術を価値に変える」ことにチャレンジできればと思っています。

私自身の現状としては、入社時に期待していたチャレンジができる機会をもらえているので、すごくやりがいを感じています。また、グループVPoEの渋谷さんをはじめ、管掌役員が上長としてサポートしてくれることもありがたいです。これまでの上司は「渡辺さんに任せておけばいいかな」と、手放しになってしまうことが多かったのですが、渋谷さんには相談してアドバイスや新しい気づきをもらっています。

こんな人と一緒に働きたい!

――MFBC-CTO室やエンジニア職に興味のある方に向けて、この組織で働く魅力を教えてください!

MFBC-CTO室では、経験豊富な方に入ってもらうことが前提になっています。ビジネスカンパニーの事業領域は多岐にわたるので、そういった方の活躍の幅を掛け算的に広げられる環境だと思います。事業に対する責任も大きい分、達成感も大きいです。

また、プロダクトが多様であることによっていろいろなケースを経験し、一つの技術を深く理解することもできます。自分が「いい」と思ったアーキテクチャ設計が、別のケースではうまくハマらず改善する、といった経験をすることで、短い期間で技術を深く追求できるのです。

ビジネスカンパニーのエンジニアとして働く場合は、会社の事業の柱であるバックオフィス向けSaaS事業のプロダクト開発に関われることは大きな魅力ですね。プロダクトやチームが多様であるゆえに、チャレンジの可能性が広いと思います。言ってしまえば転職せずに新しい領域に挑戦することも可能です。

ベトナムやインドといったグローバルの開発拠点も増えているので、グローバルでの開発経験を積みたい方にもぴったりの環境だと思います。

――CTO室の採用基準として「経験豊富な方」とおっしゃいましたが、どんな方と一緒に働きたいかもう少し詳しく教えてください。

複数のプロダクトのアーキテクチャを設計して運用した経験があり、そこでよかったこと・悪かったことを判断した経験があることが必要です。最低でも3年以上の経験があり、横断的に活動したことのある方を条件としています。

マインド面で言えば、MFBC-CTO室は「いいものをつくる」だけでは終われません。責任を持って、組織に適用するところまで担ってもらいたい。なので、つくったものを広めるコミュニケーション、啓蒙活動までできる人を採用したいと思っています。自分がつくったものに責任を持ち、会社にとって価値があると信じて向き合っていく覚悟がある人が理想です。

また、MFBC-CTO室は間接部門なので、自分たちが直接ユーザーに価値を届けられません。ユーザーに価値を届けてくださる開発チームの方の働きやすさや生産性を上げることが、ひいてはユーザーに価値を届けるのだと理解していてほしいと思います。

――最後に、渡辺さんのプライベートについても教えてください!

クルマが好きで、休日や気分が向いたときに昔のスポーツカーをレンタルすることがあります。この写真は新しいモデルですが、もちろん一般的な自家用車とはパワーも違えば、座席の着座位置やハンドル、クルマの機能などが違ったりと面白いですよ。

フェアレディZ

編集後記

今回のインタビューでは、なんといっても「技術を価値に変える」という渡辺さんのライフワークとも呼ぶべき取り組みが印象的でした。「エンジニアが技術力を高めたら、評価につながるような仕組みをつくりたい」。一社目の受託開発ビジネスにおける評価軸に疑問を持ってから、20年以上経った今に至るまで、ずっとその想いを抱いてきたと言います。渡辺さんが心から技術を大切にされ、同時に技術者をリスペクトしてきたことが伺えました。

マネーフォワードは中長期の成長に向け、開発組織に限らず全体の生産性向上が必要になります。まさにそのための取り組みを推進する渡辺さん、そしてMFBC-CTO室に、ますます期待が高まるお話でした!

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