コードキュア

カレンダーを見てみれば5日連続の観劇、特にこの3日はどれもまたと見れないような作品。しばらくの体力は出し切っただろう、だがそれらのおかげで新たな力が出てきた。これからを創作していく。
この日記を書く時、そのほとんどは思い出し作業だ、今じゃない。過去の自分に今の自分の感覚をできるだけ近づけて頭に浮かんだ言葉を両手の親指で入力していく。だが稀に今のオレが単独で言葉を生み出すことがある。幸運なことに今がそうだ。肉体は電車にあるが脳がまだ劇場を彷徨っている。ずっとそこに漬かっている。凄まじい衝撃を身体に受けた。席が3列目だったので昨日よりも近く、臓器が揺れ、脳が揺れ、心臓のリズムが変化した。この感覚はなんだろうと説明したいが、何しろ今までになかった経験のためそのままを伝えることが出来ない。非常にもどかしいが、現在のオレの言語能力と伝達能力では君に伝えられない。
今、電車で足を組んでいる、何となく身体のバランスが合うんだ。さっき、客席では十分に足を伸ばす所か足を組もうとすれば前の客席に当たるため劇中ほとんど足を動かさなかった。段々と血の巡りが悪くなり、電気が足が太くなる。いつもならそのまま意識が身体に戻り、劇から離れていっただろう。だが今回だけは違った。身体が会場の音や光、役者の動きによって動かされたおかげでまた血が回った。話がループし、オレの嫌な音が来ると思えば身体が強張り、耳に意識が飛んでしまう。聞きたくないはずなのに、さっきまでは足や手にも意識が言っていたのにその時だけは耳に意識が乗り、その音を聞く。そして役者同様、何かを抜かれたように少しだけ身体に柔らかさが戻る。そんなのが何度もだ、今のこの身体がどうなってるのかは分からない。酷く疲れているのに感覚が研ぎ澄まされ、足の裏の感覚から横に座っていた人のラストノートまでもしっかりと知覚している。
  丁度今、右手の指を見た。先の自主公演中に爪の間が離れたところ。その時は薬指だったが今みると中指までもそれが起き、ボールペンで書いた後がある。
   丁度今、電車が発車するタイミングで天井が低い音を立てた、空調の音だろうか。どこか先程劇中に聞いた低く響く、心臓を鳴らす「ドンッ」という音に聞こえ、反射した。ヤバいぞ、感覚が鋭敏になり過ぎている。違う部位の感覚が研ぎ澄まされている。ヤバいぞ、そっち側の人間になりそうだ。
最寄り駅に着いた。

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