ヒロ海

演劇 まだ学生

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いつか物語になるから

 Xで"No risk No story"という文字を見てなんとなくカッケーなと思いながらも僕は元来、どこか分からない場所から物語に対して苦手意識があります。今思いつくものでいえば、同じような設定の同じような展開ばかりする連ドラに辟易した学生時代があるのかなと思います。それに加えて、昔のそれが良かったならそれを模倣したこれも良い作品でしょう、誰も言っていないけれどそんなことを思ってしまいテレビから離れました。  あとはそんなことない、そんな展開になるはずがないのに主人公マジッ

    • 悪夢

       最近の自分が何をしているのか、それが分からなくなるタイミングがある。公演まであと2週間。それは稽古場に行けば嫌なほど見えてくる。悪夢で見る当日の公演は思いの外成功していた。しかし、今回の公演場所は演劇をするようなところではない。いまだに夢と現実の擦り合わせができない。しかし、それでも毎日のように稽古をしていると公演日よりも先のこともぼんやりと見えてくるようになる。それは自分自身のことよりも周りの人たちのこと。これからの団体がどのように運営されていくのか、作品の印象はどれほど

      • 三者三様

         20歳の冬、真面目な表情をした母に就職について話そうとテーブルに座らされた。演劇を続けるというと母は「演劇は仕事じゃない」と言う。高校卒業の際に進学や就職の道ではなく、フリーターとして演劇を続ける道を応援してくれた母だが、この2年一度も舞台に立つことのなかった俺に痺れを切らしたのだろう。俺とは違い大学で演劇をしていた兄さんのことを聞くと、母は兄の苦労話を始めた。 兄は大学卒業してからも自分の好きな演劇を続けたいと息巻いていたが、資金難により、演劇を作るどころか生活すらままな

        • 秋の入り口

           深夜2時にコンビニへと出かけると部屋の中よりも外の方が涼しいことに気付く。半袖なのが心許ない。家から少し離れたコンビニまで”木綿のハンカチーフ”を聴きながら歩く。風が吹くと受験期の寒さと孤独がやってくる。時期として考えれば僕は今まさにあの時と同じだ。  日に日に頭の中がうるさくなってくる。外部の情報がうるさくて複数のタスクがないと行動を起こせない。珍しく家事なんかをしてみると少しだけ生活にリズム感が生まれてくるのだけれど、散らかった部屋を片すよりもやることがあるだろうと誰か

        いつか物語になるから

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        • 順番
          20本
        • 2本
        • 経つ年
          15本
        • 世も末歳もすえ
          16本
        • 僕らの初舞台
          19本
        • セミのぬけがら
          5本

        記事

          この場にいること

           改めて大学の講義に出席してみると普段の自分が一人部屋にこもっているよりも簡潔でその場に適切な情報が来ているのだなと思う。分かってはいるが無我夢中にあれこれ調べたり歯止めも知らずに闇雲になっているよりかはいいだろう。  しかし、どれだけ集中を注ごうにも講義中に必ずと言っていいほど横槍は入る。専門科目ばかりの学部だから仕方のない部分はあるのだろうが、自由な発想を生むこととやりたいことだけをやるために空間を無法にすることの分別が付いていないのだろうと感じる。僕には馬鹿に見える。自

          この場にいること

          止まった日記

          ここにいる間、もう少しだけは我慢の期間かなと思うんです そうは言ったものの結局この数ヶ月の間でしていたのは我慢なんて忍耐的なものでなく、自分の中の脆いものを守るだけだったように思います。それは少し先の未来に賭けた夢であったり、稀有な経験から得た知見やそれを昇華させるための僕の今までに蓄積したもの。 高校時代によく言われた”消費的”というものがどういうものか、どういった行為が消費的だと言われるのかは未だ分かっていないが、感覚として僕は消費されていっていることだけは分かります。

          止まった日記

          最近のメモ

           10代のうちにやりたかったこと、もっとやれたことが沢山あったんじゃないかと、故郷に帰った時にだけ出てくる自分の弱い部分の影を見ると、そんなことを考える。 まだ弱い自分がいても赦せて、失敗を悔やんで、毎日がこれかも繰り返されていくのだと思っていた時のこと 頭の中にまだ鮮明に残る高校時代の日常の景色は少しずつ変わってきて、故郷と呼ぶには開発が進みすぎていて、出身地と呼ぶには僕はもうそれのほとんどを知らない もう何年も前に潰れた駄菓子屋さんはまだ残っている。看板の英語がタバコの

          最近のメモ

          普段日焼けなんかを気にしてるけど、今日だけはちゃんと陽の光を浴びる

          普段日焼けなんかを気にしてるけど、今日だけはちゃんと陽の光を浴びる

          2024年8月6日

           8月に入ってから上手く眠れない日が続いている。バイトで疲れた日に早々と晩御飯とお風呂を済ませて布団に潜っても次に目を覚ますのは午前2時。次に眠気がやってくるのは午前9時。寝て起きるともう1日のほとんどが終わっている。  今は忍耐の期間であると我欲に走り出しそうな自分を何度も躓かせる。さっき読んだ本のことも今日感じたことも、ポッと出てきた良いアイディアも。今はすぐには文字に起こさずにメモを取る。  朝の5時ごろ、窓から朝がやってきたことがわかる少し前に蝉は鳴き出す。今年の

          2024年8月6日

          蝉と夏風邪

           誕生日を迎えることに張り切りすぎてか、数日前から発熱を起こした。生活習慣が悪いのか、実家にいる時は全く起こさなかった風邪が頻発している。おかげで誰かに連絡することもなく1人で勝手に寝込むこともできる。  熱はすぐに下がってが、喉の痛みと鼻と頭痛が長引き半ば強引に外を歩いても時々フラついてしまう。  誕生日を迎え、年を取ったはずなのに自分の行動は少年の時のようだなと思うことがあった。LINEをもらったらそりゃ嬉しいし、中学の友人は少し前の公演で関わった人、家族から連絡が来て

          蝉と夏風邪

          本当にハタチになれますか

           公演が終わりそういえばもう7月だってことに気づき、それからもう2024年と言うのに慣れてきたこともそれがあと半分もないことに気付く。本格的にこれからの自分よどうする、と放り投げた疑問はどっかの道端に落としてしまった。  総合大学などではテスト期間の7月中旬、どういう訳か僕は今週一度も授業がない。月曜日は休みで火曜は元々全休、それから休講や飛んだ講義があって、全く学校に行かずに1週間を終えてしまう。なんか焦る。  今週の自分よ、君は何をした。  東京で観劇してから本読んだり、

          本当にハタチになれますか

          ここ数日のこと

           学部の公演が終わり、一段落ついたところで僕は次の日から東京へと行った。自分への労いも少し込めて。  公演直前に一度お会いしたことのある演劇関係の方が亡くなられたという情報が入った。一度WSに参加したからなのか、少し前の祖父の死をまだ処理できていないのか、考えないにしてもやけに引き摺った。  テレビもなく、ニュースもほとんど見なくなったせいで交通事故や殺人事件で人が亡くなるという情報が極端に減った。きっとその影響もあったのだろう。  公演が終わり、いつもの教室でコースのみん

          ここ数日のこと

          re〈再生〉

           久しぶりに映画を観た、「リリィ・シュシュのすべて」 いつぞやに一度見ようと思ったものの30分ほどでギブアップしてしまった作品を再生。  今週末に公演があるというのに、直近になったやることを見失い昨日はスマホを見ていても掃除をしても頭に情報が入らなさすぎて気持ち悪くなった。疲れでもリベンジ夜更かしでもないのに眠れなかった。    今日は何をしたかというと特に何もしていない、5限に一コマだけ講義を受けて未払いだった家賃を払って失恋した高校の同級生の話を聞いた。それだけ。  何

          re〈再生〉

          まだ恋人でいたい私たち

          女)いつかさ 男)__ 女)いつか、私たちがもっと老けた時、家族っているのかな 男)どういう意味? 女)別に家族になってくださいとかって話じゃないよ。最近さ、お父さんの高校時代のアルバムを見つけてね、なんかあのお父さんが学生だったことがあるなんて不思議だなーって思ったんだよね 男)逆に俺たちがお父さん、お母さんになってる姿も想像できないけどね 女)あなたはできるよ 男)え? 女)なんかさ、まだ平成だったり昭和だったりした頃で、まだスマホもスカイツリーもなかった時にみんなは元々

          まだ恋人でいたい私たち

          わが町、故郷

           ひょんなことから数ヶ月ぶりの帰省。  最近大学の友人から僕の故郷はセレブの街だと言われる。本人からしたらそんなことはないと断言できるほどなのだが、細かな話を聞いたり色々と思い出してみるとセレブまでとは言わないけれど確かにいい街なのかなと思う時がある。  2月ぶりの帰省、大学に来てからこっちに帰ってきても全然ゆくっりできない、多分今回もそんな気がする。少し前に実家が引っ越したらしいのだが、今日の今日までその場所を教えられてなかった、なんで。  まだ新しい畳の匂いがする家。前

          わが町、故郷

          6.13

           校内公演を終えた翌日、まだ疲れの抜けきらない目に飛び込んできた両親からの連絡。祖父の体調が悪いらしい。寝耳に水とはこのことだと分かるような感覚。かといって何をどうすればいいのか、今すぐ大阪に瞬間移動できるわけでも無い。  嘘では無いことは重々わかっている。数年前からいつかこういった日が来ることは分かっていた。それでも落ち着かない、頭に祖父の頭が何度も過ぎる。最後に会話をしたのはいつだっけ、なんて喋ったっけ。  今年になってから地元に帰る回数はどんどん減っていった。ちょうど