初雪

 朝、いつも通り起きても身体は動かない状態でスマホを触る。彼女から雪が積もっているとの情報を受けてカーテンを開けると屋根が白塗りされるくらいに雪が積もっていた。暖かい部屋の中でテンションが少年のように上がるのだが、この後学校に行かないといけないとなると急に19歳の現実に戻される。そしてまたベッドに戻る。

 今から動き出せば余裕を持って準備ができるのにいつもギリギリの時間までベッドに引きこもる。特に何をする訳でもなく眺めるようにスマホを触る。母からLINEが来た。一行目だけが見えて「雪降ってる?」と書いてあったのですぐにスワイプして後で気が向いたら返信しようと思った。
 そろそろ起こないといよいよヤバくなると思った頃、母からもう一件LINEが来た。いつもの絵文字が沢山使われてる文章じゃなくてかしこまった注意書きのような文章が一行。興味はあるけど、既読をつけると返信しないといけなくなるので長押しで閲覧。それでも全文は読めないほどに長かった。雪の降ってない大阪でただならぬことが起きたのだろう。

 僕は母が苦手だ。だから親元を離れた。所有物のように子どもを扱いそれを愛と呼ぶ母が嫌いだった。病気になっても自分の子どもが病気なんて周りに恥ずかしくて病院には行かせない母が嫌いだった。子どもの進路や交友関係まで全てを管理したがる母が嫌いだった。親元を離れて約一年、ようやく嫌いが苦手になった。

 帰省する度に姉の彼氏についての愚痴をこぼしていた。そして姉の前で侮辱を吐露していた。「あぁ、やっぱり出てよかった」
そう思うと同時に姉が可哀想になることも増えていった。一番所有物のように管理され自由を手に入れられる年齢になり自分の道を行こうとしたら帰るたびに別れろと言われる。母は家族は欲しいけど、実在の家族には無理を強いる。また嫌いになる。帰省しても母とは喋ることが減った。

 今回のLINEが母親としての心配なのか、それとも愛と呼んでるだけの支配欲なのかはまだ分からない。大丈夫と一行だけで返したけど、おそらく何かあったであろう姉が今どうなってるかが心配。多分家族としてじゃなく、同じような境遇を持った人間としての心配。
来月の頭、小学生以来の家族旅行がある。きっと最後の家族旅行。予定では別行動。

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