一番星

 「あの星ってまだあるのかな。意味わかる?」
彼女がそんなことを言う人とは思いもしなかった。

 物騒でうるさくて、早くて眩しい名古屋駅。の縁に二人で探した二人っきりになれる場所。そこで二人で高いビルよりもずっと遠くの何万光年も先にある星を眺めた。

「あ、あそこも光ってる」
「あれは飛行機じゃない?」
「そう?」
「ほら動いてるじゃん」
「あ、ほんとだ」

 もう星なんて見てないけどゆっくりとした会話だけは続く。

 彼女はよく口に出して幸せや好意を表してくれる。僕は恥ずかしくてその中の5回に1回しか言葉に出して返せない。恥ずかしさともう一つ、僕にはまだその幸せが分からない。今の自分も少し前の自分や他の誰かと比べた相対的な幸せなんじゃないかと思ってしまう。そんなんじゃなくて二人だけの絶対的な幸せを感じたいと思う。

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