リカバリーカレッジとは?
リカバリーカレッジとは?
リカバリーカレッジ(以下, RC)とは、支援や治療ではない「(Co-prudction(共同創造)を基本原則とした)”学び”(リカバリーに関する講座や対話)を通してリカバリー(自分らしさの回復)に取り組む」場のこと。
Co-prudction(共同創造)=同じ組織の『内部』にいない人たちが、商品の生産やサービスの提供に関与するプロセス
RCは、精神保健の領域で人々のリカバリーや主体性を重視する中で始まった取り組みで、その源流はアメリカの「Recovery Education」。2009年からはイギリスで国策として実践され、精神科のデイケアが続々とRCに転換。2017年12月の時点で、イギリス国内に85ヶ所のRCが存在している。
日本でも2013年から巣立ち会(三鷹市)が実践を開始。それに、立川、佐賀、岡山、名古屋、神戸などが続いている。(日本の場合は任意団体が参加者の受講料と、助成金を元に運営していることが多いため、継続性の面で課題がある)
すべてのプロセスを一緒に行う
RCでは「精神健康の困難を経た人」と「専門職」や「その他の誰も」が、共に一緒になって、ゼロから講座を企画・提供する、というのが特徴の1つである。専門家が当事者からアイデアだけをもらう、というだけではない。企画の組み立て・実行・振り返りまで、すべてのプロセスを一緒に行っている。
例えば、とあるRCでは6つのカテゴリーに分けられた全部で46種類の講座が3ヶ月の間に作られる(カテゴリー、講座の数、期間は各RCで異なっている)
「学生」「受講生」「講師」というように、ある程度の「役割」は存在するが、「講師=専門家」「受講生=当事者」などとは定めれていない。講座がすべて終わってから「この人は専門家(当事者)だったのか」と知ることも。
自らがコースを選び、自身のケアができる専門家になる
普通、「患者」「利用者」と呼ばれる人たちは(すでに用意された何らかの器から)何らかの支援を「受け取る」立場で、病院やデイケアは支援を「与える」立場である。
だが一方で、RCでは学生が「主体的に」学びを獲得し、自身のケアができるようになることに重点をおいている。医療現場では「支援計画」というものが立てられるが、RCでは「学習計画」というものを自ら作成することになっている。
「隔離大国」ニッポン
国連の障害者権利委員会による日本政府に対する総括所見(2022年9月)において、日本は「隔離大国」だとされている。
小学校から障害者と健常者が分離されるシステムになっていて、両者が対等に接触することが妨げられている。精神病院や特別支援教育、知的障害者施設など大規模な隔離施設が相変わらず生き残っており、スティグマの温床となっている。
スティグマ=ある人の価値を下げるラベル(烙印)をつける態度や行為などを指す広い意味の言葉。特定の民族、病気、LGBTQなどの領域で見られる問題であり、社会的に立場の弱い人々の周囲に共通して見られる社会問題。
東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授は、スティグマを解消していくための1つのヒントとして「接触仮説(contact hypochesis)」を挙げている。
接触仮説=例えば、健常者が障害者に接触することで、健常者が障害者にもつスティグマが減るという仮説
分類されたその先に
ゾーニングがどんどん進むと、マクロに俯瞰すると多様に見えて、各ゾーンにいる各人は多様性を見なくて済む。この「ゾーニングによる多様性」がクランシーの生きている世界だ。これは既にそうなっているし、これからますますそうなるだろうね。
「不登校」「依存症」「HSP」「ASD/ADHD」「LGBTQ+」「サバイバー」など、痛みに名前が付いたことで「自分らしさ」をより表現しやすくなった。その一方で、そういった名前に不必要に強く惹きつけられてしまったり、自分の所属する内集団との感覚のずれみたいなものに、苦しまなければならなくなってしまった。自分の痛みや生きづらさに名前をつけられない人たちがどんどんこぼれ落ちていってしまっている。
リカバリーカレッジは、分類されたその先を、先の道を、私たちに示してくれるのではないかと思います。
参考文献
宮本有紀(2023) . 共同創造で作られるスティグマ講座 . 福田正人(編) , こころの科学(p103-105). 日本評論社