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学校・園のお祭りやバザーで食品製造・販売を業者に委託する際の注意ポイント

盆踊りやバザーといった学校行事で、保護者が食品販売を担当する慣例があることも多いことでしょう。積極的に「やりたい!」という保護者だけでイベントが成り立つならよいのですが、「お手伝いの負荷が高い」と保護者からクレームが来るケースもあると聞きます。

「お手伝いの負荷は減らしたいけど、飲食がないとそれはそれでクレームが来る・・・」という板挟みに困っている場合には、飲食販売の外部委託も視野に入れるという手があります。
そこで今回は飲食の外部委託を検討したくなった際に気を付けたいポイントについてお話します。

その場で調理か、出来上がった商品を仕入れて販売かによって、許可証が異なる

「不特定多数の人が来場するイベント」での飲食の販売は、「その場で調理する」場合も、「別の場所で業者が作った商品を仕入れて販売する」場合も、食品衛生管理を徹底する必要があります。
これは食品衛生法で定められています。

*PTAで開催するイベントが「不特定多数の人が来場するイベント」に該当するかどうかは、各保健所の判断のようです。以下は、該当すると判断された場合に必要な許可について説明します。

プロの業者が「その場で」調理・販売する場合
焼きそばやたこ焼き、フライドポテトなど、業者が「その場で」調理・販売する場合、食品衛生許可証(営業許可証)が必要です。

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プロかどうかの判別基準は、地域によって「屋号を出して販売するか」「利益目的で販売するか」「年に●回以上販売するか」など様々です。
現時点では自治体によって判断基準が違うようなので、お住まいの保健所のサイトをチェックするか、問い合わせてみてください。

なお、業者が「都道府県」の営業許可証を持っていても、政令都市・中核市での販売の場合は別途その自治体の保健所の許可証が必要なこともあるようです。その場合、許可の基準が異なることもありますので注意が必要です。(※)

※参考:厚生労働省「営業許可制度の現状について」11ページ目「自治体ごとに営業許可の取扱いが異なる場合がある主な事例」

必ず管轄の保健所に、イベントの規模や概要(予想来場者数や、不特定多数の人が来場するのかなど)を伝え、業者が当日調理・提供する際に必要な許可証の種類は何なのかを確認しておきましょう。
そのうえで、業者と商談や交渉を始める前に、最初に必要な許可を得ているのか確認を取ると安心です。

「そもそも許可がない」「許可証がすぐ出てこない」「許可証を見せることを渋る」というような業者は、食中毒・アレルギー事故等のトラブルがあった時に、学校やPTA役員が選定・委託責任を問われる可能性もあるため、早々に候補から外すことをお勧めします。

*「当日までに許可を取るから大丈夫!」という業者の場合、許可を取るのに2週間から4週間ほどみておくとよいと思いますが、そもそも当該地域での出店経験がないというのはちょっと心配です。
例として、子どもを預けて乗せる車の運転手が「現時点で免許がない」「免許証が出てこない」「免許証を見せることを渋る」「国際免許は持ってるけど国内で運転したことがない」って考えるとヤバさがおわかりいただけるのではないでしょうか。

*「食中毒なんて、いままで保護者が作っても起こしたことがないんだから、許可証なんて不要!」という反論を受けることがありますが、そのロジックで言うと食中毒事故は起こらないはずです。
2018年度で届け出があっただけでも全国で1330件、17282件の食中毒事故が起こっています。(参考:厚生労働省 食中毒事故統計


フライドポテトの販売とチュロスの販売は似て非なる

なお、「冷凍チュロスを揚げる」などの「過熱」に過ぎなくても「そのままでは食べられないもの」の加熱であれば「半調理」とみなされ「菓子製造」の許可証が必要、など、調理品目や調理方法によって必要な免許が異なることがあるようです。何の販売をするつもりなのかを伝え、必要な許可証が何かを確認しておきましょう。

業者が製造したものを、当日会場で保護者が「販売のみ」する場合

おにぎりやパン、お弁当や総菜などの「プロが調理したもの」を仕入れ、当日会場で「保護者」が不特定多数が来場するイベントで販売する場合、仕入れ元の業者には惣菜製造業、菓子製造業などの営業許可証が必要なはずです。

管轄の保健所で、仕入れを検討している業者が許可証を持っているかどうか確認してもらえると思いますので、懸念がある場合は問い合わせてみましょう。

参考:営業許可制度の現状について(厚生労働省医薬・生活衛生局)


また、事前調理した食品を容器へ封入する場合、食品表示法に基づき、原材料(アレルゲンを含む食品に関する表示)、賞味期限、保存方法(可能であれば製造者とその連絡先)が必要となります。容器にラベルで記載するなどして、事故が起こらないよう配慮をお願いしましょう。

その対応をしてくれる業者かどうか、商談を始める際、早めに相手に確認を取るとスムーズです。

昨今は重篤なアレルギーを持っているお子さんもいます。もし在校生に重篤なアレルギーっ子がいることが明らかな場合は「慎重すぎるかな」と思えるくらいでもちょうどよいと思います。
(「アレルギーを持つ子どもなんだから、成分表があろうとなかろうとどうせ業者の屋台なんか保護者が食べさせないでしょうよ」という楽観的な方もいるのですが、アレルギーっ子の保護者にしてみたら「ハナから存在を無視されている」と感じるのと、「危なくないように配慮してくれてるな」と感じるのとでは、大きな差があります。)

「手づくりの温かみガァァ!」「保護者が手売りすることが肝心ンン!」と言ってくるような「外部委託反対派」は、不用意に外部委託した結果、万が一食中毒やアレルギー事故などのトラブルがあろうものなら、水を得た魚のようになるでしょう。
無駄に攻撃されて疲弊しないよう、法律に従い、所轄の機関の指導に従った証明できる状態にしておくことをオススメします。

保護者がその場で調理・販売する場合も、届けが必要な場合もある

保護者が、営業目的ではなく保護者の交流を目的に臨時的に「その場で調理する」出店をする場合は、別途「臨時出店届」等が必要なこともあるようです。
その場合も、地域によっては
①保護者自宅など、許可されていない場所での調理は認められていない 
②在校生とその保護者以外はイベントに来ない、限られた人だけのイベントに限る
などの条件が課されることもありますので、いずれにせよ、お住まいの地域の保健所のルールに従い出店しましょう。

届け出をしなくても罰則はないようですが、本来取るべき適切な対策をアドバイスしてもらえますし、食品衛生まわりで何かトラブルがあったときの責任を被らなくて済むはずです。

そのうえで、店舗でアレルゲン表示をしておくと、アレルギーっ子の保護者にとっては安心かと思います。

調理に火を使う場合は消防法に基づく備えと届け出を

プロかアマかに関わらず、不特定多数の者が集合する催しの露店で調理に火を使う場合は、改正火災予防条例に基づき「消火器の準備」と「消防機関への届出」を課されているはずです。(届け出が必要なイベントの規模・内容や、届け出るタイミング、書式は地域によって異なるようですが、3日前~2週間前など様々ですので、事前に確認しておきましょう)

※参考:消防庁予防課予防係(これをもとに各地域で、必要な基準を決めているようです)
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/260207_yo33.pdf

管轄の消防署のサイトに記載がない場合は、イベントの規模(予想来場者数など)を伝えて、管轄の消防署の指導に従いましょう。
また、PTA役員としてではなくとも、いち保護者として学校の施設のどこに消火器があるかをチェックしておくと安心です。

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(さらについでですが、「AED」=自動体外式除細動器 の設置場所もチェックしておくと、安心です。)

保健所や消防署の担当者の名前を控えておこう

保健所の指導に従い、業者の選定、消防署の指導に従い対策をするわけなので、後でトラブルが起こった時に備えて保健所・消防署でアドバイス・指導してくれた担当者の名前を控えておくようにしましょう。

「この学校のバザーで、在校生とその保護者以外に来場者がおらず、保護者がやるなら何の届けもいりません」等、届けがいらないと言われたらなおさらです。後々のトラブルに備えておきましょう。

「法律を守る」という姿を大人が見せることが大事

「そんな大げさな」「今までそんな法律気にしなくても、何のトラブルもなくやって来れた」「法律とかじゃなくて手づくりの温かみのほうが大事」というふうに感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし「ばれなければ法律を破ってもいい」「これまで何もなかったならやらなくていい」「届け出をしなくても罰則がないなら、知らなかったことにしよう」というのは、果たして教育機関をサポートする団体として適切な姿勢なのでしょうか。

法律のほうが現実に即しておらず不適切だと思うなら、黙ってそれを破るのではなく、管轄の省庁にその旨を申し入れるのが「大人」のやることだと思います。

「子どもたちの笑顔のために」のスローガンも大事ですが、「子どもたちの命を守る」という基礎を守ったうえに、子どもたちの笑顔があるべきだと思います。

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サムネイル写真:Dcuprioさんによる写真ACからの写真
焼きそば写真:ken_54さんによる写真ACからの写真
消火器の写真:Image by TAugustine from Pixabay

PTA活動で感じた苦労をノウハウとして他のPTA役員さんたちに還元することで、喜びに昇華しようと思っています。 「スキ」やTwitterフォロー、RT,コメント等をいただけるととてもうれしいです。