少女が見た色彩に満ちた世界 - HUES/Hana Hope(2023)
音楽には色がある。
もちろん、直接目で見ることはできないが、耳から入った音は脳内に響き、様々な色彩を私たちに感じさせてくれる。
2006年生まれの次世代シンガーHana Hopeが2023年にリリースしたデビュー作のタイトル「HUES」には、色合いや色彩といった意味が込められている。
当時17歳の少女は、このアルバムにどのような色彩を閉じ込めたのだろうか。
彼女の音楽キャリアの原点は2019年のYMOトリビュートコンサートへの参加である。
当時13歳にして、その類まれな歌声は観客はもちろんのこと共演者をも魅了し、彼女の世界は音楽を通して急速に広がる。
その年にROTH BART BARONの"けもののなまえ"にゲストボーカルとしてフィーチャーされ(当時はHANA名義)、音楽リスナーにその名を知られるようになると、TOWA TEIの楽曲や映画「Melody-Go-Round」テーマソングなどに参加し、デビュー前からその表現力をいかんなく発揮し続けてきた。
そんな彼女のデビュー作には、前述のROTH BART BARONの他、Black Boboi、浦上想起、HONNE、Maika Loubté、柴田聡子、さらには加藤登紀子と、錚々たるミュージシャンたちが関わっている。
アルバムのオープニング、"HARU"では自身の幼少期の声のサンプリングから始まり、懐かしい風景を私たちに見せてくれる。
続く"16 - sixteen"はHana Hope本人が昔から温めていた自作曲で、ROTH BART BARONのプロデュースのもと、淡い音像が綴られている。
その後もエレクトリックな"We've Come So Far"や"the ace"、何かが始まるようなワクワク感満載の"Your Song"、やわらかな青空が広がる"SORA"など、英語と日本語を織り交ぜながら、楽曲ごとに異なる色を見せてくれる。
シリアスな"Sentiment"、様々な感情が込められた"きみはもうひとりじゃない"や"それでも明日は"といったバラードもしっかりと自分の歌として歌い上げており、何度聴いてもその表現力には引き込まれてしまう。
この豊かな色彩は、もちろん楽曲ごとに参加しているミュージシャンたちが持っている色でもあるが、それらとの繋がりは2019年以降にHana本人が音楽の世界に飛び込み、見て、体感してきた、カラフルな希望そのものである。
キャリアの出発点とも言える"CUE"のカバーが収録されていることからも、アルバムに注ぎ込まれた色彩の正体がうかがえる。
この45分に描かれているのは、13歳で旅を始めた少女の、彩りに満ちたその旅の記録なのだ。
さあ、アルバムを再生してみよう。
あなたの耳には、どんな色が見えるだろうか。