コールドプレイが描く、もうひとつの宇宙旅行 - Moon Music/Coldplay(2024)


Moon Music/Coldplay


コールドプレイから、最高傑作といえる新作が届いた。
タイトルは「Moon Music」。このタイトルから推察できるように、前作「Music of the Spheres」(2021)と対になる作品といえる。

この2作はどちらも宇宙をテーマとしたアルバムだが、そのアプローチはそれぞれの作品で異なっている。
前作では球体(天体)の音楽、という名が示すように、未知の宇宙を探訪し、そこで見つける普遍の愛を描いていた。

それに対して、今作は月の音楽であり、例えば地球の周りを遊泳しながら無限の宇宙を眺めているような、より身近で現実的な宇宙が描かれている。
Moon Musicで誘われる宇宙旅行は、現実的であるが故により壮大で、かつてないほどのスケール感をもって聴く者の心を奪うのである。
昨年行われた東京公演は前作の世界観を体現しておりそのスケール感には圧倒されるばかりであったが、個人的には今作の衝撃はそれを凌駕するほどだと感じている。

個別の収録曲にも目を向けたい。
作品の核となるのは"🌈"および"ONE WORLD"の2曲である。
これらはアルバムの真ん中と最後に配置され、それぞれ組曲のような構成になっている。
イントロの"Moon Music"と合わせて、この壮大な宇宙旅行のサウンドトラックに花を添えている。
かと思えば、"GOOD FEELiNG"や"AETERNA"といった、彼らが得意とするアップテンポなダンスミュージックも収録されており、良いアクセントとなっている。

発表前にシングルリリースされていたのは"feelslikeimfallinginlove"と"WE PRAY"の2曲だったが、これらは前半で早々に登場する。
我々リスナーは先行リリースされたこれらの楽曲を聴いて新譜への期待を高めていたのだが、その期待はあくまでこの壮大な旅の序章に過ぎなかったのである。
こうしてリスナーの期待をはるかに超えて始まった旅は、最高に美しい"ALL MY LOVE"でクライマックスを迎える。
"ONE WORLD"で旅は終わりを迎え、地上に降り立ち、エンドロールが流れる。

そうしてまた、何度でもこの素晴らしい旅を何度でも繰り返したくなるのだ。


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