秋に聴きたい円熟のノラ - Day Breaks/Norah Jones(2016)
音楽の秋、芸術の秋といった言葉があるように、秋は音楽の鑑賞に適した季節とされている。
毎年、この季節になると聴きたくなる作品がある。
それが、ノラ・ジョーンズが2016年に発表したアルバム「Day Breaks」である。
ノラ・ジョーンズといえば、2002年にブルーノートからリリースしたデビュー作「Come Away With Me」の大ヒットで知られており、ジャズシンガーのイメージが強いが、自身で作曲を行うようになってからはギターでの作曲を取り入れていた。
特に本作のひとつ前、2012年リリースの「Little Broken Hearts」ではインディーロックに振り切っており、また2014年にはPuss n Bootsとしてカントリーアルバムを制作していたりと、2010年代前半の彼女はジャズから少し離れていたように思える。
そんな中、ブルーノートの75周年イベントで数々のレジェンドと共演し、それに触発されてジャズへの情熱が再燃する。
彼女の原点であるジャズへの愛が存分に注ぎ込まれ、作成されたのがこの作品「Day Breaks」である。
アルバムを再生すると、まず聴こえてくるのはドラムとベースによる"Burn"の静かなイントロ。ノラの歌声がそれに呼応すると、間奏ではウェイン・ショーターのサックスが花を添える。
全編を通してノラ・ジョーンズの原点であるピアノジャズがフィーチャーされており、ギターが爽やかな音像を作っていたデビュー作と比較すると、深みや渋みを感じられる。
ピアノ基調の落ち着いたサウンドにノラのスモーキーなボーカルが映えており、このあたりが秋の気候に似合う所以だろうと思う。
アルバムには"Don't Be Denied"、"Peace"、"Fleurette Africene (African Flower)"とカバー曲も3曲収録されている。
いずれも彼女自身のルーツに対する想いが汲み取れる選曲であるが、特にニール・ヤングのカバー"Don't Be Denied"が素晴らしい。
原曲はギターで歌われるフォークロックの曲だが、これを見事なまでにピアノジャズに落とし込み、アルバムに溶け込ませている。
秋の夜長、読書や晩酌のお供に、円熟のノラ・ジョーンズはいかがだろうか。
聴き終わるころには、きっと大きな満足感を得られることだろう。