何でも手に入る時代の子どもたち
「いや、手に入らないものもあるでしょ」という声が聞こえてきそうですが、とりあえず書き始めます。
私自身の子どものころ
まず、昔話から入ります。私(40歳)は、子どものころ、ビックリマンチョコのシールを集めるのが好きな子どもでした。
ビックリマンチョコのシールは、各弾40枚くらいから構成され、「ヘッド」と呼ばれるキラキラしたシールが1~2枚、後は天使・お守り・悪魔という三すくみが12組ありました。
私も含め、子どもは皆ヘッドシールが欲しかったのですが、ブーム時にはチョコ自体に1人2個までといった購入制限がかかっていた(!)ので、自分でヘッドシールを引くのは至難の業でした。
そこで、子どもながらに友だちどうしの「交換」ということを考えるわけですが、ヘッドシール1枚と釣り合うには天使が何枚、お守りが何枚か・・・ということをやっていると、子どもなりにいろいろな感情が渦巻いて、なかなか交換も成立しないのですよね。
結果、どんなに欲しくても手に入らないものはあるんだなと、子どもながらに諦観するようになっていったと思うわけです。
では、私の子どもは?~ポケモントレッタ
私もいつしかビックリマンシールを卒業し、しばらく収集とは無縁だったのですが、子どもが5歳くらいになったころだったでしょうか、妖怪ウオッチやポケモンのアーケードゲームをやりたいと言うようになりました。
ポケモンのアーケードゲームというのは、今の「ポケモンガオーレ」の1つ前の「ポケモントレッタ」です。当時はゲームのオメガルビー・アルファサファイヤが出た時期だったのか、ポケモントレッタにもグラードンとカイオーガが出ていて、中でも子どもはカイオーガをひどく欲しがりました。
でも、カイオーガはそこそこレアなポケモンだったのです。おまけに強かった。
ポケモントレッタは、ポケモンのHPをゼロにするとゲットしやすくなるのですが、そもそも出会いにくいし、出会えても子どもの手持ちのポケモンではなかなかHPを削れません。そうこうしているうちに他の子どもたちがカイオーガをゲットしてしまいます。
ショップを知る
カイオーガが欲しい、でもなかなかゲットできない・・・という日々が続く中、私はカイオーガを攻略すべくネットの海をさまよっていたのですが、その際に、「ポケモントレッタ」自体を売っているネットショップを発見してしまったのです。
そして、そういう着眼で家の周りを見ていると、いわゆる「カードショップ」(それまで足を踏み入れたことがなかった)でもポケモントレッタの取扱いをしていることが分かりました。
そして、そのショップに行ってみると、カイオーガがあったのです!
カイオーガにはレジェンドクラスとハイパークラスの2種類があり、レジェンドクラスは3千円くらい、ハイパークラスは9百円くらいでした。店の中であれこれ考え、すごく悩んだのですが、結局買いませんでした。
今となっては信じられないのですが、当時の私は、そこでカイオーガのトレッタを買ってしまうと、5歳の子どもに「どうやって手に入れたか」説明が付かないと思ったんですよね。
「パパがゲットしてきた」でも何でも言えばよかったのでしょうが、シングル買いということに変に潔癖だったというか、自力でゲームの中でゲットしたものではない、ということに負い目を感じていたのだと思います。
結局、カイオーガについては、その後、子どもがハイパークラスのカイオーガを自力でゲットしたのですが、そのときの喜びようを見て、「ああ、買い与えなくてよかったなあ」と思って、シングル買いしなかった自分が少し正当化されたんですよね。
というわけで、シングル買いのことはしばらく忘れていました。子どもがポケモンカードを始めるまでは・・・。
そして、ポケモンカードへ
ポケモンカードでも、子どもの目に魅力的に映ったのはやはりカイオーガでした。具体的には、拡張パック「タイダルストーム」のカイオーガEXとゲンシカイオーガEXの2枚ですね。
ゲンシカイオーガEXは買ったパックから1枚引き当てたのですが、カイオーガEXがないとゲンシカイキ(M進化みたいなもの)ができないので、子どもはどうしてもカイオーガEXが欲しい。でも、家電量販店に行くたびに購入する3パックからは全然出てこない。
これも今となっては、という感じですが、当時の私にはBOXで買うという発想がなく、また、1箱辺りにカイオーガEXが何枚入っているのかということも考えたことがありませんでした。買っていれば出るでしょう、とただ闇雲にパックを買うだけの親でした。
子どもはクリスマスプレゼントにも「タイダルストーム」をお願いしたものの、やはりカイオーガEXは出ない。そのとき私は、あのカードショップのことを思い出したのです。行ってみると、そこにはカイオーガEXがあるではないですか・・・。
ハードルを飛び越える
このとき私は、闇雲にパックを買い続けていつか1枚当てるより、この店で1枚買った方が安いという事実を冷静に見つめ、カイオーガEXをシングル買いすることにしました。でも、相変わらずの変な潔癖症で、子どもに対しては、自分が買ったパックから引いた、ということにしてしまいました。
その後、バンデットリングから箱で買うようになったのですが、子どもがレックウザEXのデッキを組みたいと言ったときに必要なカードがなく、秋葉原のトレカ侍さんでシングル買いをしました。このとき、子どもに「そういうお店があるから、そこで買う」と初めて説明したように思います。
そこからの展開は早く、子どもと一緒に近所のカードショップに行ったり、インターネットで一緒にカードの値段を見るようになったり、足りないカードを平然とシングルで買うようになったりしました。
今は停滞していますが、一時期は子どもがデュエル・マスターズのカードのシングル買いをお願いしてきたりして、私のあの逡巡はどこへやらという感じなのですが、まあ、これはこれでいいのかなという感じです。
結びに
それで、無理やり話を最初に戻していくのですが、例えば、物理的にそういうショップが周りになかったり、あるいは、こんなにインターネットが発達していなければ、私のビックリマンシールのように、子どももまた、手持ちのカードでデッキを組むしかないわけです。
でも、強いカードがいっぱい存在していて、強いカードを使ったデッキの情報も溢れていて、カードを手に入れる手段もないではない。そして、(ここが大きいのですが)親も強く「ダメ」とは言わない(何せ、私も一緒に遊んでいますからね)。
こういう状況だと、一部のものすごくレアなものを除いて、大抵のカードが手に入ります。何でも手に入る私の子ども。
でも、それがダメだと言いたい記事ではないのです。そうではない歩み方もできたけど、とりあえずこういう歩み方で随分来たので、それはそれでいいのです。
ただ、私は何かにつけてそういうことを考える性質なのですが、そうやって育つ私の子どもと私とでは、たぶん思考の風土というか、土台が違ってくるんだろうなあと思うわけです。良し悪しとは別のところで、それは子どもの将来にどういうことをもたらすのかなあ、という点に興味があります。