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世界一退屈な首都ーブラチスラバ

世界一退屈な首都ーブラチスラバ
日本の和歌山県にある高野山は縦に2km、横に4kmほどの広さだが、ブラチスラバの中心部もそれと大差ない。
徒歩ですべて観光できる。

ただ広さのみで退屈だとは言えない。高野山は山深くにひっそりとありながらも退屈ではなく、霊験あらたかな場所である。
ここブラチスラバには特徴と言えるものがない。
ブラチスラバ城もシェーンブルン宮殿に比べるとボロアパートに見える。

ブラチスラバ城の宝と言えるのはこの扇のような形をしたもののみで、他の観光名所のように巨匠の作品が展示されていない。

街を流れるドナウ川も、シュトラウス二世の「美しく青きドナウ」からは到底想像できないような、私の故郷を流れる淀川と似たような汚さだ。

国立劇場のオペラなども電車で1時間の距離にあるウィーンの方がよっぽど綺麗だ。
すべてが周囲のオーストリア、ハンガリーに劣る。
優れているのはその物価の安さだ。ただそれも東の隣国ウクライナには劣る。

だがそれがいい。
無理して背伸びしてもおらず、その荘厳さで見るものを圧倒するような圧力もない。すんなりと心に入り込み、居心地がいい。
観光地に行くと初めて見る景色に心が躍りワクワクするが、ここブラチスラバはまるで我が家に帰ってきたときのように退屈で、じっくりと思案に耽れる。

人々は何を話しているのかさっぱりわからない。街の看板もほとんどがスロバキア語のみである。
勉強しようにも北海道の人口ほどの人々しか話さない言語などには優れた教科書が存在しない。英語版でようやく入手した教科書も現在形しか記載されておらず、過去形や未来形などについて書かれていない。助動詞についても中途半端だ。
それがいい。
手探りで未知の文明と触れ合うのも悪くない。

取り敢えず三月いっぱいはブラチスラバに留まる予定だが、そのあとはどうしよう。もっとスロバキアの鄙びた場所に行くのもよさそうだ。

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