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折々のチェスのレシピ(419)少しだけ高度な知識をあなたに

劣勢の黒が放ってきた勝負手です。

第1図

もちろん取ることはできません。取ってしまうとQxf2からの三手詰めです。次善策としてビショップを逃げたいと考えるはずですが、たしかにe2には逃げることは可能です。しかしながら、やはりQxf2からビショップを取られてしまい、形勢が互角になってしまいます。

よってビショップは動かさず(取らせてしまい)別の手で対応する必要があります。しかし、この別の手が案外難しいのではないでしょうか。黒にも大駒が残っており簡単にはメイトできません。一方の白はビショップを取られてもポーンの数で優っています。つまりポーンの数で勝ちにいくしかありません。その時どんな手がいいか?

まず、

ビショップを取らせた後にそのポーンを取ってクイーンを当てていく手があります。白としては駒数で優っているので盤上にクイーンがいないほうが有利です。ただし、黒がクイーン交換に応じてくるとは考えにくいため、慎重にポーンを前進させて形を作っていきます。

また、

より強制的な形でクイーンを交換してしまう手もあります。

第1図における手が難しいのはいずれもクイーン交換を白から促すためだと考えられます。多くの人はできるだけクイーンを残したいのでこの手がなかなか思い浮かばないようです。しかし、この二つの手以外だとただでビショップをあげただけになってしまい、おそらくドローに持ち込まれるだけです。

今回の例も実戦から採録したものです(1500点前後)。どうなったかというと、白はビショップでポーンを取ってしまいました。将棋で言う頓死です。自分は絶対にそんなことはしないと思うかもしれませんが、今回のように対応に悩む局面ではどういうわけか魅入られたように最悪の手を指してしまったりします。不思議ですね。


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