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折々のチェスのレシピ(427)少しだけ高度な知識をあなたに

チェスのレシピでは序盤の急戦手筋についてほとんど書いたことがありません。それに特化した本も沢山出ていますし、ネット上にもブログ形式であったり動画であったりいくらでも見つかります。とはいえ、それだけが理由ではなく、既知の急戦手筋は最初の頃(スコアが低いうち)だけに通用するものであって、スコアが高くなると使いようがなくなってしまうからです。

理由は簡単で、そんな手筋に引っかかるプレイヤーがいなくなるからです。一生懸命に急戦手筋を覚えてもいつか使えなくなってしまい、覚えたことがすべて無駄とは言えないものの、そこから先、スコアが停滞するのではないかと思います。

スコアが上がってくると、急戦を許してしまうような穴のある駒組みに代わって、例えば、

こうしてお互いにほぼ隙のない膠着した局面のまま中盤を迎えることが多くなります。どこから崩していけばいいのか、仕掛ける前にキャスリングをしたほうがいいのか、五手後にある局面になっているはずだがそれはどちらが有利なのか、いや自分からは仕掛けずに手待ちをしたほうが得策だろうか、などなど、かなり先を読まないと次の一手が指せなかったりします。

急戦の手筋を覚える時間があればこうした中盤の入り口あたりの膠着した(形勢が互角な)局面を事前に検討したり調べたりするほうがずっと役に立つと思います。幸いなことに中盤の入り口の駒組みのパターンはそんなに多くはありません。自分が採用している序盤戦術でよく出てくる形は各々すでに知っているはずなので、そこから十手先ぐらいまでを集中的に研究しておくと飛躍的に棋力が上がるはずです。スコアが1200〜1300(chess.com)あたりでうろうろしている人はこの取り組みが特に有効なことが知られています。

上の局面はお互いにいつでもキャスリングができる状態になっています。急戦を仕掛けるとしたら最後のタイミングになりますが、見てのとおり大技が掛かるような駒組みではありません。こうなるともうどちらからも基本的には無理な仕掛けはその言葉どおりの意味で無理です。よって、長い対局になるはずです。事前研究である程度先までカバーできていないと苦しくなってしまいます。


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