折々のチェスのレシピ(334)キャスリング考
序盤から駒を捌き合う急戦調の一局です。キャスリングを観点に入れて下の局面を評価してください。
どちらもキャスリングをする暇もなくここまで局面が進んだことがわかりますが、先後では微妙な違いがあります。次に黒からはc5という手があります。黒の主な目的はビショップの活用です。もしそのポーンを取ってからキャスリングをすると、
この局面になります。黒は次にルークをg8に動かすでしょう。
こうなると白はg3とせざるを得ず、手番がなかなか回ってきません。そこで、
キャスリングをせずにRg8をあらかじめ牽制する手を指したいですが、
そんなに甘くはありません。
第1図においてAIやソフトの評価値はやや黒に傾いているだけですが、実戦的には白が指しにくいだろうと見えます。それはなぜかといえば、黒は序盤からキャスリングをしなくても大丈夫なような駒組みを作っているからです。逆に言えば、白がそれを許してしまったことになります。
キャスリングができそうにない急戦の場合には(場合にも)、かなり早い段階からキャスリングの成否やキャスリングできない時の駒組みを考えながら指さないと、あっという間に手詰まりに陥ってしまいます。
今回の例はAIやソフトでは形勢互角とされるかもしれませんが、白は第1図から守らなくてはいけない駒もあり、基本的には受けが中心の指し手になるでしょう。それはどうしても相手のミス待ちになってしまいます。