折々のチェスのレシピ(293)序盤で指してはいけない手100選
前回書き忘れましたが、このシリーズは黒側からの説明が多くなると思います。なぜかといえば、すでにご存知のように、チェスにおいては黒で勝つことがかなり難しいゲームだからです。ただ、白の緩手や悪手も含まれているので、白としても教訓が得られるはずです。
下の局面は、クイーンズ・ギャンビットに対して、黒がほぼ完璧に形を作ったところで、白が緩手を指したところです。
chess.comで1300〜1500点台のプレイヤーの9割ほどがここでミスをしてしまいます。すなわち、
ビショップをe7に引いてしまいます。これが悪手かといわれるとかなり微妙ですが、だったらまずもってビショップをd6に出さなければよかったことになってしまいます。
ここはむしろ、
c7に引くことによって、白がキャスリングをする可能性が高いhファイル方向を狙う位置にビショップを設置することができ、同時に、ここぞという局面でクイーンを繰り出していく道ができています。
また、少し手が進み、下のような局面になることが考えられます。
ここで先ほどBc7とした効果が現れます。
そうです、
e5とポーンを突く手が可能になります。もちろん白は手抜くことができません。なんらかの対応が必要ですが、白がどの選択肢を選んでも黒が形勢をよくすることが可能です。
第1図で、ビショップをe7ではなくc7と引くだけで、これだけの違いが生じてきます。もし第1図でe7を選択した場合、
黒が手損をしている間に右辺を制圧してくるか、あるいはBe2などと着々と手を作られてしまいます。
第1図における選択が黒にとって天国か地獄かとまでは言えないにしても、ゲーム全体の帰趨を決めてしまうかもしれない重要な岐路であることがご理解いただけたのではと思います。