すなわち中原はクッキーである。
第79期名人戦第1局は熱戦だった。どちらか一方を応援していたわけではないけれど、素人目には絶体絶命と思われた局面をなんとか辛抱し続ける斎藤慎太郎八段の姿を見ているうちに、いつの間にか斎藤八段に肩入れして見ている自分に気づいた。
名人戦にはもちろん名局が多いが、どちらを応援するかでファンが極端に分かれたというのが大山ー升田戦だったとどこかで読んだか聞いた記憶がある。
「大山か升田か 名人戦を前に、断片的な感想」が「近代将棋」昭和46年5月号に載っている。
その中で面白いのが、
両者の対戦は、いつでも鳴り物入りのにぎやかさで行われた。今回は笛や太鼓の音が、例年より小さいようである。理由の一つは、大山・中原のタイトル戦シリーズが、ファンの注目を集め続けたことであろう。この半年間棋界の主役は中原誠であった。
続けて、中原の兄弟子・芹沢博文八段のコメント。
「中原は、オレにとってはクッキーである。最近、新聞や雑誌からしきりと電話がかかってくる。用件はどれも中原についてだ。話をしてやると、お礼にあとからクッキーを送ってくる。すなわち中原はクッキーである。
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