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折々のチェスのレシピ(424)少しだけ高度な知識をあなたに
まずは下の局面をご覧ください。
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d5とされて黒がナイトを逃したところです。この局面をじっと眺めると、そんなにじっと眺めなくても、白からはタダで取れる駒が盤上に転がっています。e4とg5のポーンです。もちろん次の白はe4のポーンを取ってくるでしょう。そこでまた黒はナイトを逃すか、ナイトに紐を付けるかしないといけなくなります。
もう一度この局面を眺めてください。黒はh、gファイルのポーンを繰り出した形をしています。そのために最低でも二手を費やしています。白がキングサイドにキャスリングをしたのを見てそうしたのだろうとは思います。ただ、その二手の間に白は手を作ってしまっています。
h、gファイルのポーンを動かすのに二手、ナイトを逃すのに(あるいは紐づけるのに)二手、都合黒は最低でも四手ほど手損をしている計算になります。黒(後手)でこんなに手損をして勝つのはほぼ(というかまず)無理です。
駒の損得や駒の進出については誰もが気にしながらチェスを指しているはずですが、手損や手得に関してはあまり気にしない人が多い印象があります。手損は駒損に匹敵するぐらい形勢に影響を与えることがあります。
別の局面です。
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黒にはこれといって指したい手がありません。a6、Bh6、f6などが候補手となりますが、それらの手を指したとしても形勢がよくなるわけではありません。こういう時には手待ちをします。
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これは手損とは言わず、相手に指させておき小さな綻びができたらそれを咎めることになります。お互いに微妙なバランスで均衡を保っているので、小さなミスをしたほうが形勢を損ねる展開になっています。