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折々のチェスのレシピ(370)少しだけ高度な知識をあなたに

何回か前に、クローズドな展開とオープンな展開のどちらを選択するかということを黒からも誘導できることを紹介しました。

クローズドな展開とオープンな展開とではどこがどう異なるのか?と訊かれるとすぐには答えられないのですが、実際に指された興味深い例を見つけたので、ご紹介します。

第1図

どこからどう見てもクローズドな展開です。ある程度の棋力がある人はこの局面を見ただけでどちらが優勢なのかわかるはずです。

次に白は、

ビショップをサクリファイスしてきます。これを取らないと黒はキングの守り駒をタダで剥がされたことになりますが、取ったからといって形勢がよくなるわけでもありません。よって、どっちもどっちであれば取るかもしれませんが、

しばらく進むと、もう黒には挽回の手がほとんど残っていません。

クローズドな展開であれ、オープンな展開であれ、どちらが簡単でどちらが難しいということは一概にはいえませんが、クローズドな展開の場合、一瞬の隙を見せるとあとは駒組みが瓦解してしまうばかりという進行が珍しくありません

第1図をあらためて見ると、

白は、黒がキングサイドにキャスリングしたのを受けて、ナイトを右辺に集め、自身はキャスリングを保留して相手の出方を伺いつつ攻め手を作り、基本的には浮き駒がない駒組みをして、この局面に至るまでには手待ちもしてチャンスを窺っています。

ということで、クローズドな展開になった場合、かなり如実に棋力の差が出てしまう傾向があります。第1図の時点において黒はもう指す手を奪われてしまっています。

今回の実例からはまた別の貴重な教訓を得ることもできます。

黒はキングサイドにキャスリングをしてhファイルのポーンをひとつ上げている形になっています。これは基本的には守りとしては堅い形ではあります。h6のポーンはg5にビショップやナイトが進出することを牽制する意味がありますが、こうした展開になった時にはサクリファイスの格好のターゲットになってしまっています

それを阻止するには、h6のポーンを取ってくるビショップを事前に捌いてしまう必要がありますが、クローズドな展開ではそれも難しいです。だとすると、クローズドな展開を見越して、白のように弱みを見せない駒組みをかなり早い段階で目指す必要があります。

このように、クローズドな展開はそれなりの棋力と経験を要求される展開といえますが、チェスの醍醐味のひとつでもあります。オープンな展開と比べてクローズドな展開はそれほどパターンは多くありません(ちゃんと数えたわけではありませんが)。したがって、事前にある程度までは深く研究しておくことが可能です。クローズドな展開は、研究が深いほうが有利です。


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