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折々のチェスのレシピ(362)少しだけ高度な知識をあなたに

後手番(黒)にとってもっとも嫌な白の初手はなにか? この問いには、先人達の知恵や努力、そして近年のAIやソフトの分析によって、すでに答えが出ており、

d4です。

さらに、白の初手d4に対する黒の応手には、d5、e6、Nf6があり、それ以外だと形勢を損ねることもわかっています。ということで、黒はd5、e6、Nf6のいずれかを指す必要があります。

まず、d5と受けた時の典型的な進行は以下になります。

形勢自体は互角であり、黒としてはまずまずの展開ではあるものの、この先にこれといっためぼしい手がありません。また、ここまでの進行で白が大きなミスをすることも考えにくい手筋です。

では、e6とした時の進行はどうなるでしょうか。

この場合も、白は大きなミスをするまでもなく、このあたりの局面までは進むことになります(形勢自体は互角です)。

d5、e6と応じた場合、黒は攻勢のきっかけが少なくとも中盤まではないことになります。

残るはNf6です。

Nf6と黒が応じた場合、白はc4かNf3以外だと形勢をやや損ねることがわかっています。よってどちらかで白は二手目を指してくることになります。

白がc4としてきた場合、

お互いにミスなく指し継ぐと上のような局面になる可能性が高いです(こうなっていない場合にはそれ以前にどちらかが緩手や悪手を指していることになります)。実はこの時に、少しだけ黒がよくなる手があります

b6です。これによって黒はc8のビショップをb7で使う手を見せていると同時に、cファイルの白のポーンの進出を牽制しています。この時に白は、

この手を指さないと形勢を損ねるのですが、この手を指せるプレイヤーは少ないです。仮に指してきたとしても、

目障りだったh4のビショップを盤上から消すか、もしくは害のないところに逃すことが可能になります。

では次に白がNf3としてきた場合を考えます。

白がNf3としてきた場合には、黒には上のような局面になる手筋が存在しており、ここまで作ることができれば黒がやや優勢になっています。

ということで、白が初手d4と指してきた場合、Nf6から手を作っていくのがもっとも黒にとって可能性のある応手だということが知られています。

今回の最後の局面図に関しては後日また登場してもらうことがあります。


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