折々のチェスのレシピ(373)少しだけ高度な知識をあなたに
前回からの続きともいえることをテーマにします。最善手や次善手を指し続けるとはどういうことかという内容です。
まずは下の進行をご覧ください(短いです)。
次の局面で終わっています。
黒はもうc6のナイトを捨てるしかなくなっています。捨てないのであれば戻って手損をするしかありません。いずれにしてもこの局面で先後の差とはいえないだけの形勢の差がついてしまっています。あえて数値にしてみると、白対黒は60対40ぐらいでしょうか。序盤のこの段階でこれだけ差がつくと普通は黒の圧倒的に負けです。
ある程度スコアが上がるとそれだけ強い相手と対局することになりますが、相手が強くなればなるほど、序盤のミスは取り返すのが難しくなるか、あるいは取り返せなくなります。
白は、四手目に、
a3という手を指していますが、これはいうまでもなく黒のf8のビショップの動きを牽制しており、これで黒はほぼ手詰まりに陥ってしまっています。
初手から上下を変えて見てみます。
黒は一手目からかなり謎な手を指しています。eファイルのポーンの進出を止めているつもりなのでしょうが、これではdファイルのポーンの自由な展開を許してしまいます。
二手目に至っても黒はかなり謎な手を指しています。これはchess.comでスコアが1500点以上のプレイヤーの実戦から採った例なのですが、この局面で白は、黒が相当弱いとまずは感じるはずです。というより、もう勝ったと思っても不思議ではありません。そのぐらい黒のこの二手は負けますと言っているに等しいからです。
しかし、1500以上スコアがあるのであればなにか秘策があるのではと白はちょっと疑心暗鬼にもなるかもしれません。たしかに、この「折々のチェスのレシピ」を書いている人は、黒にこの後なにか知られていない手筋があって、それを目指しているのかと思ってこの棋譜を追っていったのですが、最初に見たとおりなにもありませんでした。
このプレイヤー(黒)の戦歴を見るとまだchess.comに登録して日が浅く、おそらくまぐれで勝っていたのでしょうが、しばらくして再度確認すると1200点あたりまでスコアが落ちていました。ある程度の期間と対局数を経たスコアというのは嘘をつかないものです。