折々のチェスのレシピ(359)少しだけ高度な知識をあなたに
前回の第1図でa6とせずにオープンな展開を志向するc5を指した場合を考えます。
a6とした場合にはクローズドな進行になる可能性が高いと前回ご説明しましたが、c5の場合にはそれと比べてオープンな展開に誘導しやすくなります。しばらく進むと、
上のような局面になっている可能性があります。もちろん他の展開になっている可能性もありますが、おおよそ似たような駒組みになりやすいです。なぜかというと、ある程度の棋力のあるプレイヤーは最善手か次善手を指してくる可能性が高いため、実は展開が読みやすいのです。
さて、上の局面はおおよそ膠着状態です。だいたいこの辺りで軽い膠着状態が生じます。後手番の黒としては形勢が互角であれば特に問題はなく、むしろこのままドローに持ち込んでしまってもいいぐらいです。やってはいけないのは、無理に局面を打開しにいくことです。
無理に局面を打開するのではなく、ここで黒には指したい手があります。
h4のビショップが半分浮き駒になっている状態を咎める手です。それを気にして、ビショップを交換してきたら、
ナイトで取り返して、形勢は互角のままです。また、
どちらかの駒でナイトを取ってきたら黒からはビショップを取ります。どちらにしても形勢は互角のままですが、クイーンに対して効いている目障りなビショップを排除したことで黒は駒展開の自由度が上がりました。
また、このようして均衡した局面を維持していくことができるかどうかでスコアはだいぶ上下します。形勢を互角に保ったまま中盤から終盤を迎えるというのは実はかなり大変なことで、それなりの棋力がないとできません。
第1図でc5とポーンを突いた時点で、上の局面まではおおよそイメージしておくことができます。そして膠着した局面での次の一手もわかりました。そうなるとさらに、白の次の手を具体的にイメージして対策を練っておくことも可能になります。
前回、今回と、序盤のポーンの動かし方で、かなりガラッと進行が違ってくることがご理解いただけたかと思います。どちらがより優れているということはそんなにありません。大切なのは、自分が指したその一手によってその後の展開がある程度読める(はず)だということです。第1図でa6とするのであればその備えをしておく必要があり、またc5の時も同様です。
とりあえずは、第1図でa6の時の展開とc5の時の展開を知っておけば、かなり応用が効くはずです。
このように、後手番(黒)であっても、ある程度は自分が望むような展開に誘導することが可能です。