折々のチェスのレシピ(54)
まずは下の局面をご覧ください。
クイーンを早く繰り出してきた相手(今回は白)に対してはそのクイーンをいじめる形で自分の駒組みを進めることができると何度も書きましたが、上の局面はその一例で、後手の黒でもすでに勝勢です。
今回はさらに進んで、ここからどう勝っていくかという指し回しと考え方です。黒はd4のナイトによってb5のビショップ取り、または、c2としてルークの両取りが可能な贅沢な局面です。
しかし、もちろんクイーンが向かい合っています。よってそれをまず考えないといけません。ここでクイーンを交換してしまっても黒が勝ち切ることは可能です。ですが、その自信がない場合には、まず、
一旦、白のクイーンをどかしてしまいましょう。この手にはもうひとつ意味があって、e7にいた黒のビショップはクイーンがいなくなると浮駒になってしまうことです。それを解消してクイーンを動きやすくする意味もあります。
ということで、白のクイーンは逃げますが、ここが今回の最も重要な点です。さて、d4のナイトはどちらの選択をすべきでしょうか。ビショップを取るか、あるいはルークを取るか? 「チェスのレシピ」「新・チェスのレシピ」「折々のチェスのレシピ」を読んでいただいた方には明らかなように、
ビショップを取ります。a1の白のルークは当面戦力とはなりません。それをわざわざナイトを使い二手かけて取りにいく理由がないです。それよりも、ここで二手かけてルークを取るよりも(ルークをここで取るとそのナイトがしばらく黒の戦力から外れてしまいます)、ビショップを取ることで相手戦力を直ちにダウンさせ、さらには次の攻めにもナイトを参加させるほうがずっと賢明です。