折々のチェスのレシピ(550)少しだけ高度な知識をあなたに
近年はAI(エンジン)を使って局面を分析したり自分の対局を振り返ったりするかと思います。そこで重要なのは、最善手を鵜呑みにしないことです。各エンジンには少しずつ傾向みたいなものもあり、また同じエンジンであっても読ませる深度によっても、また使用するPCの性能によっても提示する最善手が違ってきますし、同じ局面でも再度読ませると別の手を提案してきたりします。
どの手を示してきても最低でも数手先まで動かしてみて、その一手がなにを意味しているのかを把握した上で「なるほど、そうか、そういう意味か」と納得し、ちょっと自分には向いていないというような手筋であれば、次善手や三番目の手を指したほうがいい場合もしばしばあります。
例えば、
この局面でAIはいくつかの手を示しますが、
この手は駒得を先に確定させてしまおうという意図があり、その後はお互いに駒組みが続きます。しばらくすると、
こんな感じであまり変哲のない駒組みになる可能性が高いです。
また、ビショップでチェックを掛ける手も表示されるでしょう。
ここで黒はビショップに代えてナイトで受ける手もありますが相当形勢を損ねるのでここでは検討しません(興味のある方は動かしてみてください)。で、ビショップで受けてきた場合には交換してしまいます。
ここで白は、先ほど放置しておいたポーンを取って駒得を確定させますが、
おそらくクイーンで取り返してきますので(ポーンで取り返してきた場合黒は形勢を損ねます)、白もクイーンを当てます。ここでクイーンを交換してくるかどうかは黒に委ねられていますが、つまりはクイーンの交換含みの展開になるということです。
また、
ポーンで受けてきた場合には、
c6の地点でポーンを捌きあって、ビショップを一旦引きます。これは黒のナイト(b8)の展開に制約を与える意図があります。
どの展開が優れているかは一概には言えません。しかし、進行は随分と変わります。第1図の段階で最低でもここまでの進行(展開)を検討して、自分が指したい手がどれかを把握しておくのが事前研究でAI(エンジン)を利用する意義ですが、できればその先まで(なにしろまだ序盤ですので)研究を深めておきたいところです(特に早指しをやる人は)。