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折々のチェスのレシピ(115)
序盤においてセンターポーンの活用を保留する指し方は存在します。定跡にもなっているので有効であるとされてきたわけですが、だからといって指しこなしが容易とは限りません。
下の対局は、白がe、dファイルのポーンを使うべきところで使っていないため、早々にセンターを制圧してしまった黒が序盤からかなり指しやすい展開になりました。
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最後は白のポカで頓死するわけですが、そうでなくても白はキングを安全にするための手をほとんどといっていいほど指していません。
センターを制圧されている。キングの安全が図れていない。この二つがセットになると、たいてい負けます。
この対局において黒は、中盤以降、緩い手も指しているのですが、「折々のチェスのレシピ」を書いている人が見る限り、どうも黒は白にやってこいと手を渡している印象です。白が指してきた手を逆用して攻めていけばいいと構えている感じです。そのぐらい序盤で優位をもらってしまったということでもあります。
ソフトやAIの出現により、以前言われていたほどにはセンターポーンが重要ではないということがわかってきましたが、それでも薄れた重要性はほんの僅かであり、軽視していいことにはなりません。むしろ、センターを軽視する人が増えたことにより、センターの攻防が勝敗を分けるゲームが一層多くなった印象です。