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折々のチェスのレシピ(78)

前回、無駄な手を指している暇はないということを書きました。ということを念頭に下の局面をご覧ください。

第1図

黒がルークを動かしたところです。直接的にはb2の地点を狙ったものですが、それはすぐに受けられてしまいます。ということは別の狙いがあると考えたほうがよさそうです。

a7のポーンが取れるよと言っているのですが、それに誘われて取りに行った局面が上図です。白は、これでb2のポーンを取れないだろうと思っています。もちろん取れません。しかし、黒の本当の狙いは、

これです。つまりa2のポーンは毒饅頭だったことになります。黒としては、第1図の局面で、4ランクから黒のクイーンがいなくなれば、ほぼ勝ちを決定できる局面だと判断できたわけです。黒のRb8は一見無駄な手のように見えて実は意味のある手だったことになります。

第1図において白は、なんでこんなに美味しい局面を作ってくれたのか一回疑うべきでした。普通は簡単に受かる手は指してきません。単純に黒のミスであれば咎めればいいだけですが、今回のように毒饅頭の可能性も常にあります。

もう一度、第一図を見てください。

ソフトやAIの評価値はほぼ互角ですが、ポーンをきれいに組み上げている黒に対して、白はこれからという段階です。白は指しにくさを感じているはずです。そんなところに毒饅頭が差し出されたので、つい食べてしまったというのが真実でしょう。

白は、ポーンについてはd、eファイルしか動かしていません。いくらこの段階でソフトやAIの評価値がほぼ互角とはいっても、潜在的にはかなり差がついてしまっていると考えたほうがよさそうです。ソフトやAIの評価値は、例えば互角を示している局面でも、次の一手で大体どれを指しても数値が変わらない場合もあれば、最善手以外では数値が大きく変化する場合もあります。同じ互角でも局面によって意味合いが異なってきます。ソフトやAIを参照する時に注意が必要な点です。


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