折々のチェスのレシピ(221)
今回は、ある局面を取り上げて、戦力差について考察したいと思います。考察というほど大袈裟なものではないのですが、比較的わかりやすい例を取り上げて、中盤における形勢の優劣を考えてみたいと思います。
この局面を見て、白の駒組みのまずさを指摘してください。すぐにいくつか思い浮かぶかと思います。駒の損得はないので純粋に駒組み(手順)の差しか盤上には存在しません。
なぜ、g5にナイトがいるのか?
なぜ、d3にクイーンがいるのか?
b1のナイトはどのように活用するつもりなのか?
ここまでで、黒が各駒を十分に展開しているのに対して、白はb1のナイトが初形のままです。これだけでも白と黒の間には戦力差が存在しています。また、黒にはdファイルにポーンが残っているのに対して、白はセンターのポーンが捌かれてしまっています。これも戦力差を生んでいる要因です。
白が、g5にナイトを動かし、d3にクイーン動かしている間に、その手数を使って黒は着々と有利な駒組みを進めてしまっています。ここからは、白の受け次第ですが、すぐにゲームが終わってしまう可能性があります。一例としては、
という展開もあり得るほど第1図における白の駒組みは脆弱です。どの局面でも無駄な手を指さないというのは当然のことですが、とりわけ序盤で無駄な手を指すとそれだけで形勢に差がついてしまいます。今回の例のように、駒の損得がないのに形勢に差がつくというのは、手損をしているか駒組みが悪いかのどちらかか、あるいはその両方です。手番も貴重な戦力ですので、無駄にしないようにしましょう。