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折々のチェスのレシピ(497)少しだけ高度な知識をあなたに
ここから先、黒がどう指しても当面形勢が好転することがない序盤です。
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序盤といってもまだ次は黒の三手目です。この段階で形勢を損ねてしまっていてはかなり今後が憂慮されます。
白の初手e4に対して黒がc5とするのはよく知られたシシリアン・ディフェンスですが、二手目で、
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d6は黒がかなり指しにくいというのは今ではこれもまたよく知られています。代えて、
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dファイルのポーンは保留してe6とするほうが黒にチャンスの芽が多いとされています。という理由から「チェスのレシピ」ではこの指し方を多くご紹介してきました。どちらであってもまだ白がやや有利には違いないのですが、少しでも黒であるディスアドバンテージを減らすにはこんな工夫も必要になってきます。
で、シシリアン・ディフェンスのdファイルポーンの保留型で手が進むと、
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さまざまな進行が考えられますが、これが黒のひとつの理想型になります。この形を大体でも構わないのでまずは頭に入れておき、この手数までにこうならないであろうと予測できる場合にはどこかで白が間違えている可能性が高いという判断できます。
白がキングサイドにキャスリングをしたり、他にも進行次第で別の型が出現しますが、黒としてはすべての駒を運用できる準備が整い、次に白からどんな手を指されたとしても対応が可能になっています。白は黒の低くて堅牢な陣地を崩すのに苦慮することになりますが、その間にまたどこかでミスをする可能性もまた高くなります。