折々のチェスのレシピ(413)少しだけ高度な知識をあなたに
chess.comで1700点台のプレイヤーの対局からある局面を抽出しました。
黒はキングがうわずっているだけでなく端に追いやられていて見るからに危険です。ただし、メイトされてしまう筋はありません(←ここ重要です)。一方の白は、一旦相手に手を渡すと(つまり上の局面です)、チェックは掛かる、ビショップは取られるの合わせ技が控えていて、かなり厳しいです。
この両者の差がどこにあるかというと、一言でいえば、メイトが可能な駒組みをここまでに作っていたか否かにあります。メイトされない黒は相手の手が途切れた時点で猛攻を仕掛けることができるところまで手を作っています。手を渡せない白はチェックを掛け続けないといけませんが、必ずどこかで途切れてしまいます。
この対局の黒はキャスリングをせずにのらりくらりとキングを逃げているのですが、一旦逃げ道ができてしまうと白はキング追いきれなくなったり、また元の位置にキングが戻られたりしまいます。駒が多く残っている中盤あたりまでであれば相手キングが上部脱出しても追い詰めることができる可能性が高いです。しかし、残り駒が少ない終盤になると案外とキングの逃げ道はあって、駒が少ないがゆえに追い詰めることが難しくなります。
この対局は実質的に駒損をしているから白が劣勢のようにも見えますが(それもありますが)、実際にはキングの逃げ道のあるなしで形勢に大きな差が生じていると言ってもいいと思います。駒が減ってしまう終盤までにキングに確実な逃げ道を用意しておいてあげることもゲームに勝つための重要なコツです。