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折々のチェスのレシピ(321)キャスリング考
下は中盤まで進んだところの局面です。
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白はキャスリングを済ませています。黒はキャスリングをせずに手を作っています。fファイルに白のポーンが進出しており、黒は危ない形に見えるかもしれません。しかしながら、ソフトやAIの評価値はやや黒優勢です。
理由は見てのとおり、白は相手陣に接近しないと攻めの働きができないナイトを活用できていないことと、キングをキャスリングをしたサイドに黒のポーンを進めさせてしまっていることなどです。
序盤まで局面を戻してみます。
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とりたててなんの変哲もない駒組みです。黒はここでキャスリングをすることも一考に値します。と同時に他の手も選択肢にはあります。
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ひとつは、g5にビショップの進出をさせない守りの性格が強い手です。
また、
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ビショップの活用を優先するこの手もあります。どちらの手がより優れているかは評価が難しく、どちらでも同じぐらいの価値があります。
重要なのは、キャスリングをする一手を別の手を作るために使っている点です。キャスリングを保留することによって、後手番でも白に手が追いつくわけです。これは黒がキャスリングを遅らせる大きな理由のひとつです。
もし白が第1図のままクイーンをd2に置いていたならば、
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どこかの段階でそれを狙うように黒はクイーンサイドにキャスリングをすれば、白は厳しい対応を迫られることになります。キャスリングの選択肢を保留していた黒が柔軟に戦いを進められる例ともなっています。