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折々のチェスのレシピ(320)キャスリング考
キャスリングについては、「チェスのレシピ」や「新・チェスのレシピ」そしてこの「折々のチェスのレシピ」において、折に触れ説明してきましたが、今回こうしてキャスリングだけに特化して考察してみようというのには理由があります。
「序盤で指してはいけない手100選」では、もとよりすべての戦型や相手の序盤戦術について説明しきれないわけですが、その基本的な考え方を知ってしまえば、おおよそ相手のどの手にも対応ができます。「チェスのレシピ」や「新・チェスのレシピ」、そして「序盤で指してはいけない手100選」を読んだ人であれば、少なくとも序盤で形勢を損ねることはあまりなくなっているはずです。
ただ、そこでひとつ残るのがキャスリングです。キャスリングも序盤に行う(もしくは行わない)の決断をしなければならないことが多く、序盤における難所です。一手もらったからキャスリングしておこうとか、する必要がないのに(つまりもっといい手があるのに)キャスリングをしてしまったり、そうした実例はいくらでも存在しており、今この時にも行われているでしょう。
キャスリングに関する考察の導入ということで、今回はキャスリングをなかなかしない相手の例を見てみます。
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黒はキャスリングを保留して自陣を堅めると同時に駒を働かせる準備をしている段階です。次に黒は、
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c4のポーンを狙ってきました。
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タダで差し出すわけにはいかないので白はc4のポーンに紐付けします。
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それだったらと、次に黒はクイーンを交換しましょうかという手を指してきます。
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白がそれを嫌っても、
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黒は強引にやってくるはずです。なぜなら交換してしまったほうが黒の形勢が良くなるからです。どうしてかといえば、これにはいくつかの理由があって簡単には説明できないのですが、まず、ポーンアップした黒はエンドゲームまで持ち込めば有利になる可能性が高く、相手にクイーンがいないほうがそうしやすい(エンドゲームに持ち込みやすい)という点が挙げられます。また、黒はキャスリングをしないことによって、キング自身が自由に戦力になるという点も挙げられます。一方の白は早くにキャスリングをしてしまったためにキングが攻めの戦力となるには手数がかかってしまいます。
それとは別に、なかなかキャスリングをしない相手に対して、白は相手の急所が分かりにくく、どこから攻めていいのか判断が難しいです。
今回は急ぎ足でキャスリングをしないことの利点を見てもらいました。とりあえずは、序盤でかならずしもキャスリングをしなくても指せる手(有効な手)が存在することと、駒組みをしっかりしていればキャスリングをしなくてもキングの安全に問題がないことを見てとってもらえたらと思います。
上とは別の例をもうひとつ、今度は流れを含めてご覧ください。
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キャスリングをしていない黒のほうが優勢です。
ひとまずこの段階では、キャスリングをしないとキングが危険だとか(そういう場合もありますが)、キャスリングしておいたほうがなんとなく安心できるとか、あるいは、キャスリングはするものだという臆見をひとまず払拭してもらえればOKです。