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折々のチェスのレシピ(93)
終盤、どちらが速いかという局面です。
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白にはナイトが残っており、駒の数では優勢ですが、ルークを動かすことができなくなっていて、手詰まり感が漂っています。白がここから勝つには相当な知略が必要ですが、形勢は若干ながら黒がいい程度です。
とはいえ、白は黒のセンターポーンを手付かずで残してしまったことが、この終盤にきてかなり響いていることは確かです。
序盤、遅くとも中盤までに、白は黒のd、eファイルのどちらかのポーンだけでも捌いておけば、形勢はかなり違っていたと思われます。
この対局は興味深くて、中盤、
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黒のキングはここまで逃げる場面がありました。ほぼ白勝勢なのですが、白を持ってメイトする手筋はすぐには思い浮かばないのではないかと思います。センターポーンがキングの守りをしています。一方の白はクイーンの可動域があまり広くなく、窮屈な動きを強いられています。
結局、黒は第1図のように、キングを比較的安全な場所まで戻し、この対局に勝ってしまいます。
白は、黒のセンターポーンを残してしまったことが最後まで響いてしまった形になりました。あまりお目にかからない駒組みですが、センターの重要性がよくわかる例でした。